勝つだけでは満足できない。男子400メートルリレーで日本は38秒16の優勝を果たした。日本勢同種目の金メダルは、98年以来20年ぶり。それでも第1走者から山県亮太(26=セイコー)多田修平(22=関学大)桐生祥秀(22=日本生命)ケンブリッジ飛鳥(25=ナイキ)のメンバーは、目標だった37秒台に届かず、達成感はなかった。

2位に入った地元インドネシアの大声援が競技場を包み込む中、0秒61差をつける独走だった日本は、喜びもほどほどにトラックを後にした。目標は世界一。20年ぶりのアジア王者も、ベストより0秒56遅れたタイムに納得がいかない。第1走者で飛び出した山県が「金メダルはうれしいが、狙っていた37秒台を達成できず、悔しい」と話した。

銀の16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)、銅の17年世界選手権では第2走者に飯塚を起用していたが、今大会では直線に強い多田を起用。新布陣で最年長となった山県の自覚がにじんだ。バトンを多田に渡す時に「いけー」とあえて大げさに叫んだ。日本選手団の主将も務めた男は「普段はやらないんですけど、多田がやる気になって、激走してくれればと」と明かした。気持ちを前面に出し、鼓舞した。渡すバトンは少し詰まったが、それも実戦の緊張感の中でしか積めない貴重な経験となった。「いろんなパターンでリレーを試すこともできた」と可能性の幅も広がった。

20年東京五輪では金メダル獲得を目指し「37秒50」を最低ラインに掲げる。リオ五輪で記録した37秒60から0秒1を削り出す。同五輪は4人の100メートル自己記録の合計は40秒38。それが今大会は40秒13と0秒25も短縮されている。計算上は“金メダルライン”に届くポテンシャルを持つ。「世界の頂点を目指します。2年後です」と山県。ためた喜びは、東京で爆発させる。【上田悠太】

2走の多田のコメント 金はうれしいが、決勝でいい走りができなかったので悔しい。

3走の桐生のコメント 金でよかった。個人で出ていないので来年はしっかりいきたい。

4走のケンブリッジのコメント 表彰式で国歌が流れたのは初めてなのでうれしかった。