陸上男子100メートルで未公認ながら日本人初の電気計時9秒台をマークした桐生祥秀(19=東洋大)が、「東海大流走法」で公認記録での9秒台に挑む。5日、埼玉県内の東洋大川越キャンパスで練習を公開。トップスプリンターを輩出してきた東海大流の前傾したフォームへの改造に取り組んでいることを明かした。

 衝撃的な走りには理由がある。先月28日のテキサス・リレーでは追い風参考ながら9秒87をマーク。桐生のフォームは従来より、少し前傾していた。五輪ファイナリストの高野進、日本記録10秒00を持つ伊東浩司、世界選手権200メートル銅メダルの末続慎吾ら東海大出身の名スプリンターが築き上げた伝統の走りだった。

 これまでは上半身を垂直にして、上から地面をたたくように走ってきた。今は上半身を前に傾け、前に重心を乗せるように走る。縦から前へ。土江コーチは「日本人のトップが作り上げたテクニックで、理にかなっている」と説明。本人も「今まではもも上げの延長で縦ばかりだったが、進む感じがあった」と手応えを口にした。

 次戦は国内屈指の高速コースでもある織田記念(18、19日、広島Eスタ)。2年前に10秒01を出すなど相性もいい。追い風参考の9秒台を出したことで公認記録で日本人初の9秒台への夢はふくらむ。「期待に応えないとトップアスリートとはいえない。楽しめば結果はついてくるし、自分の走りをすれば出る」。技術面の自信とメンタル面の充実。19歳に快挙の予感が漂う。【田口潤】