12年ロンドン五輪代表、江里口匡史(27=大阪ガス)が、2年ぶりにレース復帰した。

 成年男子100メートル予選4組に出場。追い風0・6メートルの条件下で11秒09で8着。準決勝には進めなかったが、14年9月以来となるレースを終えた。

 「走れただけでよかったです。一時期はレースに出られるのかな、と思ったので試合に出られただけでうれしいです。ひとまず走って、足は大丈夫だったのでホッとしています」。

 自己ベスト10秒07の江里口は、09年からは日本選手権を4連覇していた。山県、桐生らが台頭する前の日本短距離界のエースとして君臨していた。ロンドン五輪でも男子400メートルリレーでエース区間の2走を務めて、表彰台まであと1歩の4位に入っている。

 しかしその後、左足の故障でブランクをつくった。昨年7月には左足の手術を行って、長く競技会から遠ざかっていた。「苦しかった時期はありましたが、今年(4月)は熊本が地震で大変なことになって熊本のためにも頑張りたかった」。

 江里口は熊本県菊池市出身。4月24日に陸上界が初めて熊本地震の募金活動を行った際にはレース出場予定がないにもかかわらず、神戸ユニバー記念競技場に駆けつけて「よろしくお願いします」と、先頭に立って募金を呼びかけた。

 「国体で熊本代表に選んでもらった。『まだまだあきらめてない、目指している』という姿を県内の人に見せられたらと思っていた。今は足の耐久性がないので、回復を見ながら、今季中にもう1度、記録会に出られればいい。それが来季につながるかなと思う」。元エースが、再スタートへの第1歩を踏み出した。