日本人初の100メートル9秒台を記録した桐生祥秀(21=東洋大)が、来春にオーストラリア合宿を計画していることが10日、分かった。同地では今年2~3月にかけて初めて合宿を実施。自己記録を100分の3秒縮める土台を作った。再び来季も合宿を行い、さらなる記録更新を目指す。来季100メートル初戦も同地での競技会「サマー・オブ・アスレティクスGP」が有力になった。

 歴史を変えた9秒98の走りから一夜明け、日本学生対校選手権に出場するチームメートの応援に駆けつけた桐生は「(9秒台を)出したんだなと実感が昨日(9日)よりある」と語った。この日、日本陸連科学委員会の各種データも公表され、100メートル48歩程度だった歩数が、9秒台だったレースは47・3歩だったと知り「これにまたピッチが加われば、タイムも更新できるのかな」と期待した。大会終了後はチームメートから胴上げもされて、満面の笑みだった。

 社会人1年目となる来季の進化プランの序章も明らかになった。関係者によると、桐生は来春もオーストラリア・ゴールドコーストで合宿を実施する予定という。今季は9秒台だけでなく、4度の10秒0台、そして今夏の世界選手権では個人種目での出場こそ逃したが、男子400メートルリレーで銅メダルと実り多かった。その下地を築いたのが2~3月の同地での合宿。温暖な気候の中、スピード練習に重点を置いた。来季も同様の合宿を敢行。目標に掲げる「世界のファイナリスト」「9秒台をコンスタントに出せる」選手になるべく進化を追求する。

 この計画で、来季100メートル初戦も今季同様、3月のキャンベラでの競技会「サマー・オブ・アスレティクスGP」になる可能性が高まった。練習の延長線として臨んだ同レースでマークした10秒04は今季自身2番目の好タイム。来季も初戦でいきなり好記録、そして9秒台の再現も期待される。

 今後の進路について、競技引退後も働ける条件で交渉中。卒業後も指導を続ける土江コーチは「既存の陸上部がある企業も、陸上部がない会社もある」と明かした。【上田悠太】