男子100メートルのノア・ライルズ(21=米国)の9秒86や、女子3000メートル障害のベアトリス・チェプコエチ(27=ケニア)の9分04秒53など、今季世界最高が6種目で誕生した。女子棒高跳びでは李玲(29=中国)が4メートル72のアジア記録をクリアした。

日本勢は男子400メートル障害の安部孝駿(27=ヤマダ電機)が50秒27で6位、男子200メートルの高瀬慧(30=富士通)は21秒43で8位だった。

男子100メートルは米国の若手2人が同タイムの好勝負を演じた。

序盤は昨年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンのクリスチャン・コールマン(23=米国)と、昨年のアジア大会金メダリストの蘇炳添(29=中国)の前半型スプリンターの争い。そこで前に出たコールマンがリードした。

後半もリードを保っていたが、終盤でライルズが一気に追い上げフィニッシュ直前で逆転した。ライルズ、コールマンとも9秒86の今季世界最高。ライルズは自己記録を0・02秒更新した。

「ウォームアップで今日は“その日”(自分の日)だとコーチに言ったんだ」とライルズ。「スタートしたときに(ライバルが)近くにいると感じられたら、後半で勝利にもっていける」

ライルズは状態の良さと自身の特徴を踏まえ、落ち着いてレースを展開したことが勝利につながった。

 

男子400メートル障害も期待通りの好勝負が展開された。

アブデルラーマン・サンバ(23=バーレーン)とレイ・ベンジャミン(21=米国)が3位以下を引き離して競り合った。僅かにリードしていたベンジャミンを、最後の直線でサンバが逆転。47秒27の今季世界最高で優勝した。

安部は前半こそサンバ、ベンジャミンと並んでいたが、後半で大きく崩れて50秒27の6位。課題としていた前半のリラックスと、逆脚になる6台目の切り換えが上手くできずに終わってしまった。

 

◆今季の男子100メートル

ダイヤモンドリーグでは上海大会が男子100メートルの初戦。6秒34の室内世界記録を持つコールマンと、19年室内世界最高の6秒47を持つ蘇、そして200メートルの2018年ダイヤモンドリーグ・チャンピオンのライルズが争い、ライルズが終盤で逆転勝利を得た。

コールマンは故障があったのか、今季の室内シーズンは一度も試合に出ていなかった。調子を上げてくるのはこれからだろう。

動向に注目したいのは4月に、9秒94の当時の世界最高で走ったディビン・オドゥドゥル(22=ナイジェリア)だ。昨年までは10秒10が自己記録だったが、一気にタイムを縮めている。200メートルでも19秒74の今季世界最高を、100メートルの9秒94と同じ日に出した。

最速男を決める100メートルの覇権争いは、まだ始まったばかりだ。