令和元年、「R」の年に学校初の高校女王が生まれた。女子200メートルで立命館慶祥の石堂陽奈(2年)が初優勝を飾った。決勝でマークした23秒67(追い風1・3メートル)は福島千里(31=セイコー)の持つ北海道高校記録(06年総体=福島千里)を0秒14更新。5日100メートルではライバル御家瀬緑(恵庭北3年)に敗れ2位に終わったが、雪辱を果たして、2年生で表彰台の頂点に立った。

   ◇   ◇   ◇

「慶祥」のハチマキを巻いた石堂がゴールラインに飛び込んだ。目の前に広がる視界には誰も映らない。優勝を確信したが、じっと電光掲示板を見つめた。北海道高校新の23秒67。両手を天に突き上げ、チームメートの声援に応えた。5日の100メートルでは0秒05差の2位で御家瀬に連覇を許した。雪辱を果たした2年生女王は「優勝できたことは本当にうれしい。今までやってきたことを全て出し切れた」と笑顔がはじけた。

「このままじゃ帰れないっていう気持ちがあった」。164センチの17歳の両肩には背負うものがあった。大会直前の故障で男子100メートルの優勝候補だった鷹祥永(同2年)が大会を棄権した。連覇を目指した400メートルリレーも準決勝で敗れた。「先生、家族、仲間が支えてくれた。自分ができることは優勝してみんなにメダルを掛けて上げること」。100メートルで負けた悔しさだけじゃない。仲間の思いが胸にあった。

御家瀬と同じ北海道ハイテクACジュニア出身だが、高校は立命館慶祥に進んだ。1年時は全国大会常連の臼井文音(現立命館大1年)と競い、今季は日裏徹也監督(37)と二人三脚で練習を積んできた。単調で苦しい冬季練習を経た後の3月には日本選手権100メートル3位の青山華依(2年)ら同世代のトップが集う名門・大阪高と初めて合同練習もした。すべてが日本一を目指すためだ。

今季に入り挑戦した200メートルでは特化した練習はしていないが、天性のカーブ技術でリードを取ると、独走した。日本人3人目の100メートル9秒台に突入した小池祐貴(24=住友電工)でさえ果たせなかった総体日本一。04年から指導してきた日裏監督が初めて総体に選手を送り出したのが10年沖縄総体。思い出の舞台で最高の結果を出した教え子に「優勝したことはものすごくうれしい」とたたえた。ただ続けて「(23秒45の)日本高校記録は出る状態だった」とも指摘した。

目標に掲げた優勝は果たしたが、石堂も監督と思いを同じくする。「タイム見たときは少し悔しかった。これからは日本高校記録を超えたい」。新たな歴史を刻んだことすら「通過点」と言ってのける17歳は全国制覇を世界で戦う布石にしていく。【浅水友輝】