北海道栄の小野隆一朗(3年)がエースが集う花の1区で、日本人歴代5位となる28分55秒をマークし区間4位に食い込んだ。チームは30位と前年21位から順位を落としたが、同校史上最速2時間6分45秒の原動力となった。

最長10キロを走る都大路のエース区間。小野は最初から最後まで顔色1つ変えなかった。今大会前まで過去1人しかいなかった日本人での29分切り。レースを走り終えても喜びは見せない。「自分のベストは出せた。28分台を狙っていたので」。道大会2位通過の北海道栄のエースが、区間4位の快走で観衆を沸かせた。

作戦通り、想定通りの展開だった。「最初から前へ、前へと攻めの走りをした」。号砲直後から前に位置取ることに成功。3年ぶりに出場した昨年は1区を務めた藤本竜(国学院大1年)が位置取りに苦心し、失速。山中慎監督(51)との対策が実り、好位置を確保。以降はアップダウンもなんのその。同監督が「しっかりと練習を積めていた」という地力を発揮し、最後まで先頭集団を形成。区間賞にあと7秒と迫る日本人歴代5位の28分55秒でエースの役割を全うした。

都大路を目指して駅伝部のある北海道栄に進学。伝統の雪上練習でも人一倍努力し、力をつけた。10月には憧れのOB藤木宏太(国学院大2年)が1区を走った出雲駅伝で初優勝。先輩の快挙に発奮するように調子を上げ11月には1万メートルの北海道高校記録(29分16秒36)を樹立し「大会が近づくにつれ良くなった」。充実した状態で集大成の全国を迎えた。

記念大会で強豪校の出場が増えた今大会でチームの順位は昨年21位から後退したが、タイムは1分54秒縮めて同校最速を更新した。2年連続で部の新たな歴史を刻んだエースは帝京大に進学を希望する。「箱根駅伝を目指したい」。都大路で浴びた歓声を、次の夢への力に変える。【浅水友輝】

◆北海道勢と男子1区 第1回開催の1950年(昭25)と51年は5キロ、73年は9・6キロで行われ、区間10キロ開催は今年で67回目になる。小野の28分55秒は、15年田辺浩司(北海道栄)の29分53秒を58秒更新する10キロの道勢最速タイムとなった。30分を切ったのは小野、田辺の2人だけ。30分台も10人しかおらず、初めて31分を切ったのが99年栗原健一(室蘭大谷=現北海道大谷室蘭)で30分51秒。なお同区の区間最高は95年ジュリアス・ギタヒ(仙台育英)の27分48秒。