東京五輪(オリンピック)の陸上男子400メートルリレー代表の選考基準として、個人種目の出場を「原則として1種目のみとする」とし、継続審議となっていることを巡り、日本陸連の強化部とアスリート委員会が7日、都内で、意見交換を行った。

アスリート委員会の高平慎士氏(35)は「原則」としている部分に関して、具体性がないことを指摘。メダルを獲得するという点では、個人種目よりも、男子400メートルリレーの方が可能性が高いのは事実としてある。戦略として理解は示す。しかし、急な発表だっただけに、選手側には戸惑いもあったとし、「プロセスを踏んでやってほしい」と納得できる説明を求めた。その上で「選手が納得しない形で、行くことはさせないで欲しい」と強調した。

日本陸連の麻場一徳強化委員長(59)は今後も議論を重ね、3月中旬の理事会までに結論を出す意向を示した。「要項を改正しないといけないところは改正しないといけない。意見を聞いた上で結論を出していきたい」と話した。

個人2種目で戦うことを念頭に置いている選手からは疑問の声も出ている。その中で、日本陸連側が「2種目」の出場に難色を示すのは、東京五輪の日程が厳しいことが理由だ。

8月1日 100メートル予選

8月2日 100メートル準決勝、決勝

8月4日 200メートル予選、準決勝

8月5日 200メートル決勝

8月6日 400メートルリレー予選

8月7日 400メートルリレー決勝

加えて国立競技場のタータン(走路)は反発が強く、体の負担も大きいという。五輪特有の精神的、肉体的負担も大きく、2種目に出場すれば、リレーに完調で挑めないリスクが高いとする。悲願の金メダルを狙うために、異例の提案に至った。

たしかに歴史的には世界大会の個人2種目出場が、リレーへ懸念材料にはなっている。15年世界選手権の高瀬、そして17年世界選手権ではサニブラウンも100、200メートルとも代表になるも、世界大会独特の厳しいレースの反動から、その後のリレーは欠場を強いられた。

昨秋の世界選手権でも、100メートル自己記録9秒98の小池が両種目に出場も、400メートルリレー予選時は本調子には遠く、決勝は多田に交代を余儀なくされた。有力な海外勢もしかり。今季200メートル19秒88のアジア記録を樹立し、両種目にチャレンジした謝震業(中国)はリレーの予選で中国新に貢献するも、負傷で決勝は走れず。英国のヒューズも100メートル決勝、200メートル準決勝を戦い、リレー決勝はバトンを渡した後、けいれんのようなしぐさがあった。

世界選手権では6人のリレーメンバーが登録できるが、東京五輪では1人減る。もしも2人の故障者が出れば、大幅な戦力ダウンは避けられないことも背景にある。