陸上男子100メートルの桐生祥秀(25=日本生命)は近年、試合で左腕にアップルウオッチを巻いて、走っていました。ただ、今季初戦となる18日の日本室内選手権(大阪城ホール)の男子60メートルのレースでは、それを外して走ります。15日、ツイッターでは、こうつぶやいています。

「試合中のアップルウォッチ着ける禁止かー‥ 試合中何つけよ 新しい時計を探すか違うのにするか」(原文まま)

アップルウオッチはレースで使えない!? でも、他の時計ならば使える!? どういう事なのか、日本陸連のルールに精通する担当者の方に聞いてみました。

その答えは、競技規則にあります。

第144条の「助力」に関する項目には、こう記されています。「競技中、競技場内で、助力を与えたり受けたりしている競技者は、審判長によって警告され、さらに助力を繰り返すとその競技者は失格になるということを勧告される」

そして「許可しない」行為が定められており、その1つには、こう書かれています。

「ビデオ装置、レコーダー、ラジオ、CD、トランシーバーや携帯電話もしくは類似の機器を競技区域内で所持または使用すること」

つまり、アップルウオッチ含め、スマートウオッチは通信可能なので「携帯電話もしくは類似の機器」に該当します。

例えばです。走っている最中、アップルウオッチにラインのメッセージが届いたとします。それが走りに関するアドバイスだったら、「助力」と捉えられる可能性があるということです。

「これが助力になるわけないだろ!」というツッコミは、まさしく、その通り。「そもそも走っている最中に、アップルウオッチのラインを確認できるわけねぇーだろ」って話ではあるのですが、陸上に限らず、ルールというものは万能ではないですから、こういうこともあるわけです。

スマホやiPad(アイパッド)などの通信機器やビデオ装置は、ウオーミングアップのエリアまでは使用できるそうです。ただ、招集のコールがかかった時に係員に預ける制度になっています。逆に言えば、通信機能のない時計はレースでも着けることができます。

この規則は国内だけでなく、世界陸連も同じになります。

もちろん、助力を受けていたかどうか、という判断は審判長にあります。「アップルウオッチが助力になっている」というのは、ちょっと無理な論理であり、というか、言い掛かりでしかないので、現実的には、仮に競技区域内でアップルウオッチを着けていても、失格になることはないでしょう。

また誤解のないよう加筆しておくと、スタンド等からの声掛け、応援は大丈夫です。【上田悠太】