プロランナーの川内優輝(34=あいおいニッセイ同和損害保険)は、2時間11分33秒の12位で最後の福岡を走り終えた。9月に足をけがしてから急ピッチで調整してきたが、4キロ地点ですでに先頭集団から後退。それでも「痛みはないです。1カ月半で無理にあげてきた感じだけど、今日できることは尽くせたかなと思います」と、すがすがしく振り返った。

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09年の同マラソン初参加から12回目の出場。「あぁ、最後なんだな…」。75年の歴史に幕を閉じる大会に思いをはせた。「沿道からも『最後だ最後だ』『ありがとう。ありがとう』という応援がたくさん飛んでいた。本当にこの大会がなくなってしまうのは残念だなと思います」。

数々の記憶がよみがえった。市民ランナーとして出場した11年。今井正人(トヨタ自動車九州)と終盤の根比べを制し、日本人トップでゴールテープを切った。「今日も頭の中は今井か川内か、今井か川内かって。今井さんは今日出てないのに、今井さんと走ってる感じだった。苦しい時に思うことは毎回違うんですけど、今日その10年前のことが浮かんだっていうことは、強くなるためのきっかけのレースだったんだなと思います」。

16年は、大会2日前に左足首をひねった状態で日本人トップの2時間9分11秒。スタート地点で「絶望的な状況だった」という土俵際から奇跡を起こした。

「自分が死ぬ間際みたいな感じでした。走馬灯のようにいろんな福岡の記憶が浮かびました。こんなことってあるんだな」。

川内にとっても特別な大会が終わった。「この大会が何らかの形で残ってくれればいいなと思います」。最後は目に涙を浮かべながら、福岡の空に願いを届けた。【只松憲】