中高生のトラック&フィールド、箱根駅伝の予選会、実業団女子駅伝の地区予選、そして競歩の世界陸上選考競技会と、10月後半も多くの陸上競技会が開催される。<箱根駅伝予選会>

 世間的に注目度が大きいのは箱根駅伝予選会だ。個人の20キロレースに1大学12人が参加し、上位10人の合計タイムで9校が来年正月の本戦に出場できる。“安全圏”と見られているのが日体大、東海大、日大の3校だ。

 名門日体大は正月の本戦で19位と大敗したのをきっかけに改革に着手した。3年生の服部翔大をキャプテンに抜すいし、高校駅伝の名将だった渡辺公二氏(前西脇工高監督)をスタッフに招へい。チームは大きく変わった。

 服部を筆頭に1万メートルの28分台を3人の3年生がマーク。本戦6区で大ブレーキをした福士優太朗ら4年生も奮起して、5000メートルと1万メートルの平均タイムでは参加校トップになっている。今年の日体大は芯の強さが感じられる。

 東海大は2年前の箱根駅伝2区区間賞の村澤明伸(4年)がチームを引っ張る。今季は1万メートルで27分50秒59と学生記録に迫った。このタイムは参加選手中トップで、3年ぶりの日本人予選会トップも期待できる(3年前も村澤が1位)。早川翼(4年)も28分25秒32と参加選手中3番目の記録を持ち、二枚看板が特徴のチームになっている。

 日大は昨年、まさかの予選落ちを喫した。佐藤佑輔(4年)、ガンドゥ・ベンジャミン(4年)、田村優宝(3年)がヒト桁順位でフィニッシュしたが、4番手が132位。上位選手と中位以下の選手の断層が大きかった。今季は全体的な底上げも進み、昨年は行わなかったコースの下見などもした。女子マラソンで世界陸上金メダリストを育てた鈴木従道監督が、高地トレーニングなどのノウハウを導入。万全を期している。

 3強に続く力があるといわれているのが帝京大、上武大、中央学大、拓大、東農大の5校。だが、昨年の日大の例もあり、絶対とは言い難い。神奈川大、大東大、法大、専大、国士大、亜大らも含めたなかで5校が落ちることになる。

 東京国際大など、経営者の肝いりで参入してくる大学も後を絶たない。1990年以降に本大会で優勝したこともある神奈川大、大東大、亜大でさえボーダーラインという現状。伝統校も一歩間違えば本戦に出られない時代に箱根駅伝はなっている。<日本ジュニア・ユース選手権>

 日本ジュニア・ユース選手権は、厳密には2つの大会だ。年末時点で20歳未満の選手が参加する日本ジュニアと、18歳未満の選手が参加する日本ユース。同じ会場で、同じ種目が交互に行われていく珍しいパターンになっている。

 今回一番の注目はユース選手権の男女100メートルだ。女子にはロンドン五輪に戦後最年少選手として出場した土井杏南(埼玉栄高2年)が、男子には先の国体で10秒21の高校新をマークした桐生祥秀(洛南高2年)がエントリーした。

 土井も5月に11秒43の高校新。2人の記録は世界的なレベルで、桐生の10秒21はユース世界最高、土井の記録も今季ユース世界3位である。来年のモスクワ世界陸上出場も狙える位置にいる。

 さらなる記録更新が期待されるが、シーズン終盤のこの時期には難しいか。2位とのタイム差などを見れば、2人が圧倒的な力を持っていることがわかるはずだ。<ジュニアオリンピック>

 ジュニアオリンピックは中学生の大会。正式エントリーはまだ発表されていないが、Aクラス(中学3年)男子3000メートルに池田親(加古川山手中)が出てくる可能性がある。5月に8分21秒22の中学記録をマークしたが、8月の全日本中学選手権は体調不良で惨敗した。

 しかし高校1年生と同じ少年Bに出場した国体は3位と復調。中学生の大会で本来の力を見せつけたい。<全日本50キロ競歩高畠大会>

 全日本50キロ競歩高畠大会は来年のモスクワ世界陸上代表選考会となる。有力選手では2011年のテグ世界陸上10位だった荒井広宙(24・北陸亀の井ホテル)が出場。ロンドン五輪代表を逃した悔しさをぶつけてくる。

 陸連が定めた3時間45分6秒の“派遣設定記録”を上回ればその場で代表に決定する。荒井の自己記録は3時間48分40秒(日本歴代4位)。ハイペースに果敢に挑戦していくと思われる。<全日本実業団女子駅伝・地区予選>

 そして全日本実業団女子駅伝の地区予選が2週連続で行われる。

 中日本大会では豊田自動織機とデンソーが対決。昨年は豊田自動織機が独走したが、12月の全日本実業団対抗女子駅伝ではデンソーが5位と健闘したのに対し、豊田自動織機は12位と崩れた。

 豊田自動織機は今季、1500メートル日本記録保持者の小林祐梨子(23)が1万メートルでも力を発揮し始めている。デンソーは昨年の全国大会3区区間賞の杉原加代(29)がエース。2人の出来がチームの浮沈カギを握る。

 西日本大会は2年前の全日本駅伝優勝の天満屋、ワコール、ダイハツが激突。天満屋はロンドン五輪マラソン代表だった重友梨佐(25)、ワコールは同5000&1万メートル代表の福士加代子(30)、ダイハツはマラソン代表の木崎良子(27)がチームを引っ張る。野口みずき(34=シスメックス)も参戦予定。

 チームの勝敗とともに、エースたちの直接対決も楽しむことができそうだ。【10月後半の主な陸上競技大会】10月19日~21日:日本ジュニア・ユース選手権(名古屋市・瑞穂競技場)10月20日:箱根駅伝予選会(東京・立川市)10月21日:実業団女子駅伝中日本大会(岐阜市)10月26~28日:ジュニアオリンピック(横浜市・日産スタジアム)10月28日:実業団女子駅伝西日本大会(福岡県宗像市)10月28日:全日本50キロ競歩高畠大会(山形県高畠市)