<埼玉県駅伝>◇20日◇さいたま新都心駅前~熊谷スポーツ文化公園(6区間=42・195キロ)

 公務員ランナー・川内優輝(25=埼玉県庁)が実業団のトップ選手たちに挑戦状をたたきつけた。埼玉県庁チームで出場。最長区間3区(11・9キロ)で5人抜きの36分54秒でタスキをつないだ。2日前の18日にはエジプト国際マラソンで優勝。パスポート忘れの失態こそあったが「2泊5日の弾丸ツアー」を乗り切った。レース後、常識を覆す調整に自信を得た革命児は「駅伝中心でマラソンがおまけの選手には負けたくない」と実業団の選手に宣戦布告した。

 なぜここにいるのか。2日前にエジプトのマラソンに出場していた川内が埼玉にいる。沿道のファンから「あれ何で走っているの」「エジプトにいたのでは」との声が聞こえた。約9700キロ先のエジプトから1泊4日で帰国した翌日の駅伝。だれもが驚く「2泊5日の弾丸ツアー」も、本人は「追い抜かして気持ちよかった」と5人抜きのレースを楽しんでいた。

 16日の日本出発時は、自宅にパスポートを忘れるという失態を演じた。だが、汚名返上とばかりに、18日のエジプト国際マラソンは気温20度近い中、2時間12分24秒の大会新で優勝。2日後の地元埼玉の駅伝も5人抜きの快走で強行日程を完走した。「マラソンを走った後の駅伝でもスピードは落ちない」と、無謀ともいわれた弾丸ツアーで収穫を得た。

 この1年でマラソンは10戦6勝。実業団に所属する日本のトップ選手は年2、3戦が普通で、企業のPRも兼ねた駅伝中心のトレーニングをしいられる。レース後、常識を超えた独自の調整に自信をつかんだ25歳は「駅伝が中心で、マラソンを片手間にやっている選手には負けたくはない」と、実業団のトップ選手に対抗心をあらわにした。

 「“いろいろなことに挑戦したい”との意欲が、自分を支えている」。「2泊5日の弾丸ツアー」も、その挑戦の1つ。最近は68年メキシコ五輪銀メダルの君原健二氏、メキシコから3大会連続五輪出場の宇佐美彰朗氏の本を読んで、マラソン中心の練習法を研究する。駅伝中心の実業団の存在がマラソン低迷の要因ともいわれるだけに、市民ランナーとして「マラソン日本」復活の礎になる決意は強い。

 今後の目標は8月の陸上世界選手権(モスクワ)代表選考を兼ねた別府大分毎日マラソン(2月3日、大分市)。あと2週間しかないが「マラソンのトレーニングの一環」と翌週の27日も奥むさし駅伝(埼玉・飯能)に出場予定。世界選手権の出場権をつかむためにも、駅伝の実戦でスピード強化に励む。昨年のロンドン五輪出場を逃した悔しさは忘れない。マラソン界の革命児の常識を覆す挑戦は続く。【田口潤】

 ◆川内の今後

 27日には奥むさし駅伝(埼玉・飯能)に出場予定。その翌週の2月3日は別府大分毎日マラソンに出場し、8月の陸上世界選手権(モスクワ)の出場権獲得を狙う。そこで出場権を逃した場合は、3月3日のびわ湖毎日マラソンで、世界選手権出場を目指す。