陸上男子ハンマー投げの04年アテネ五輪金メダリストで、20年東京五輪・パラリンピック組織委員会理事も務める室伏広治(39=ミズノ)が、10月に「スポーツサイエンス機構」を設置する東京医科歯科大の教授に就任することになり16日、東京・湯島の同大で記者会見した。現在、体育学部の准教授を務める中京大を退任し、8月1日から同機構設置のための特任教授になる。

 就任のきっかけは今年4月、室伏が体調を崩し同大で治療を受けたことからだった。さまざまな部門から医科学スタッフが専門知識を持ち寄り、充実したサポート体制を実感。6月の日本選手権では20連覇の偉業を遂げた。

 その頃から既に室伏は、組織委員会理事として日本各地や世界への視察、またスポーツディレクター就任など、活動の大半が東京で割かれるようになり、練習拠点も都内の大学に移動。そんな時に同大から、機構の設置と教授としての招請を打診された。諸条件が一致し「拠点を東京に移すのが一番のポイントだった」と就任の動機を語った。

 現役アスリートの就任はもちろん、体育学部を持たない医科学系の教授就任という異例のケース。ただ、独自の理論を確立し、20年近くもトップ級で活躍する室伏に何ら違和感はない。「トップ級の選手寿命を延ばすのが一番の狙い」(田中雄二郎理事)という大学側の意向に、室伏も賛同した。

 「今のメダリストが6年間、体調を維持すれば東京でもメダルを取れる。若い人も。さらに今、2番手でメダルに届きそうな選手もたくさんいる。この3つが集まれば東京では一番多くのメダルを取れる。そのサポートをしたい」と、動作解析など科学的なものはもちろん、故障からの回復といった医学面でも自らの経験を還元するつもりだ。自身の6年後には「夢を持つのはいいこと」と話すにとどめたが、まずは「室伏教授」として、6年後の東京五輪を成功に導く腹積もりだ。【渡辺佳彦】

 ◆東京医科歯科大学

 1928年(昭3)10月、東京高等歯科医学校を設置。44年4月に東京医学歯学専門学校となり医学科を設置。51年4月に国立学校設置法により東京医科歯科大学となり医学部医学科、歯学部歯学科が設置された国立大学。吉沢靖之学長。