張りのある声が、マイクを通して届いた。箱根駅伝(来年1月2、3日)に挑む東海大は17日、湘南キャンパスで練習を公開。記者会見では、駅伝主務の瀬古天哩(てんり、22)がメンバーを紹介した。マラソン界のレジェンドでDeNA総監督の瀬古利彦氏(58=日刊スポーツ評論家)の三男は「5位というチームの目標に向けて、仕事をやり遂げたい」と話した。

 東海大浦安高時代に800メートルで高校総体出場。「箱根を走る姿を中継車の父に見てもらいたい」と東海大入りしたが、転機は負傷続きだった2年の12月に訪れた。同級生のマネジャー選挙で24票中19票を獲得。「可能性がある限り選手でいたかったので、母に泣きながら電話した。父は『4年間やり遂げなさい』と」。走りたい思いを抑えて、両角監督とのパイプ役として68人の選手をまとめてきた。

 「競技者としては素晴らしい。親としては面白い。トータル的に尊敬しています」と父を評した。卒業後は一般企業に就職するため陸上は箱根駅伝が最後。父に走る姿を見せることはできなかったが「チームの結果が恩返し。『早稲田には勝つな』と言われていますけど」と笑顔で話した。【荻島弘一】

 ◆瀬古天哩(せこ・てんり)1992年(平4)6月28日、東京都生まれ。東海大浦安中時代はサッカー部だが「横より前に走ったら」と父に言われて陸上に転向。家族は両親と兄2人弟1人、陸上選手は天哩だけ。天哩の哩は「駆ける」の意味だが「駆けられませんでしたけど(笑い)」。170センチ、64キロ。