<世界陸上>

 【大邱(韓国)8月31日=佐藤隆志】男子マラソンの川内優輝(24=埼玉県庁)が、「漫画のヒーローなりきり作戦」で悲願の8位入賞を目指す。日本代表として韓国入り。注目の市民ランナーは、4日(午前9時スタート)の本番に備え陸上の漫画本を6冊も持参。世界の強敵と渡り合い、栄光を手にするサクセスストーリーを自らの姿に重ね、レースへの闘争心をかきたてる方針だ。

 注目の市民ランナー川内が、「起爆剤」を抱えて釜山空港に降り立った。起爆剤とは、自宅から持参した陸上の長距離漫画だった。「自分で言うのもなんですが、日本有数の中・長距離漫画のコレクターです」。そう言うと、速射砲のような早口で語り始めた。

 川内

 世界と戦う日本人を読んでモチベーションを高めようと思いました。長距離ものばかり。世界を相手に戦っている場面のものを選んで6冊持ってきました。漫画の中だと日本人がやたらと強いんで。

 お気に入りは「奈緒子(中原裕、小学館)」「マラソンマン(井上正治、講談社)」「めざせ1等賞(みやたけし、日本漫画学院)」「EKIDEN野郎(高橋雄一郎、白泉社)」「なぎさMe公認(北崎拓、小学館)」。映画にもなった「奈緒子」は、中でも主人公の壱岐雄介が「日本海の疾風(かぜ)」と呼ばれた亡き父の姿を追うようにマラソンの道に入り、高校3年生でアテネ五輪金メダルを獲得するストーリー。野性児で破天荒な主人公に対し、折り目正しい公務員の川内は真逆のキャラだが、高校3年で父を亡くしている自身の姿が重なる。

 前日30日には、朝のジョギングを兼ねて父葦生(あしお)さんの墓に立ち寄った。「『祈っていてくれ』と言いました」。現在男子マラソンは低迷期にあり、日本勢の苦戦は必至。だからこそ「見ている人に夢や希望、勇気を与えたい」と言う。ここは漫画のヒーロー・壱岐雄介になりきって、アテネでなく大邱の街を川内が爆走する。