今回は、スペシャルオリンピックス日本・東京のプログラムの一環として昨年スタートした「SO Cheer」です。活動の様子や今後の目標を聞きました。

全日本チアダンス選手権大会でTeam JCDAと共演(C)JCDA
全日本チアダンス選手権大会でTeam JCDAと共演(C)JCDA

SO Cheerは2019年4月、知的障がいのある人たちにスポーツを楽しむ機会や競技会を提供する組織「スペシャルオリンピックス」の国際本部によって、コンペティティブ チアリーディングとして準公式競技に認定された。世界各国で知的障がい者のチアプログラムが広がり、スペシャルオリンピックス日本・東京でもスタートした。

SO Cheerのプログラムを提案したのは、チアプログラム推進担当の稻山(いなやま)敦子さん。きっかけは、知的障がいのある娘・芙雨珂(ふうか)さん(15)だった。「娘が、映画のチア☆ダンを見て『チアをやりたい!』と言ったんです。でも、障がい者にチアができるかなと思っていました。そんな時、(スペシャルオリンピックス国際本部で)チアリーディングの競技を世界で広めたい、という話を聞き、娘のために日本でも取り入れたい! と思いました」。

チアプログラム導入後は、日本チアダンス協会(JCDA)の全面協力でインストラクターが指導を行っている。今年からは、チアリーディングとパフォーマンスチアの2種目に取り組み、活動の場を広げている。

全日本チアダンス選手権大会でTeam JCDAと円陣を組む(C)JCDA
全日本チアダンス選手権大会でTeam JCDAと円陣を組む(C)JCDA

19年9月には、ジャパンオープンチアリーディング選手権大会のエキシビションで演技を披露。同11月には、全日本チアダンス選手権大会で、Team JCDAと共演。今年1月にはスペシャルオリンピックスデーとして開催された、Bリーグ・アルバルク東京の試合のハーフタイムに出演。スペシャルオリンピックス日本の公式応援ソング「YOUR SONG」に合わせて、JCDAが振り付けをしたダンスを披露した。芙雨珂さんは活動を通して「とても楽しくて勉強になっています。音楽を聴きながらリズムにのってできるので、これからも頑張って続けたいです」とうれしそうな笑顔を見せた。

稻山さんには思い出に残っているエピソードがある。あるとき、笑顔の少ないバスケットボールの女性アスリートの母親が「娘の笑った顔が見てみたいと思いました」とチアプログラムに参加した。チアを始めて「娘の笑顔が見ることができました!」と泣いて話してくれたという。それを受けて「当たり前が当たり前でないことに気づきました。でも、チアはそれ(笑顔)ができる。グッとくるものがありました」。

Team JCDAとの練習風景(C)スペシャルオリンピックス日本・東京
Team JCDAとの練習風景(C)スペシャルオリンピックス日本・東京

イベントの度に、アスリートが持つ障がいに応じて、分かりやすく指示を出す難しさもある。でも、「この子には何ができるか、どんなことに取り組めるかを考えます。上手に言葉で伝えられないアスリートもいますが、自分ができることに挑戦する姿は素晴らしい。やりがいもひとしおです」と話す。

チアを始めた当初は「自信がない。できない」と言っていたアスリートも、大勢の前で演技し、キラキラした照明や大きな歓声を受けて「やった! 私もできる!」と変わる。「アスリートたちは、みんなを応援する気持ちを持って踊っています。だからこそ、自分の踊りが誰かを元気にできる! 人の力になる! それが大きな喜びに変わります。上手にできなくてもいい。生き生きと頑張っている姿が誰かを元気づけます。そして、その頑張りを見てくれる人がいることが、アスリートたちをさらに成長させています」。

現在、スペシャルオリンピックス日本・東京では、2つ目のチアリーディングチームとして、健常者を交えた混成(ユニファイド)チームの立ち上げを目指し、パートナーを募集中だ。稻山さんは「全国にチアプログラムを作って、YOUR SONGをみんなで踊り、各スポーツを応援する活動をしていきたいです。この活動をさらに広げて、知的障がい者のチアリーディングチームが全国にたくさんできると良いなと思います」と話した。

BリーグA東京のハーフタイムにも出演(C)ALVARK TOKYO
BリーグA東京のハーフタイムにも出演(C)ALVARK TOKYO

◆SO Cheer Nippon Tokyo 2019年に日本での活動を開始。活動拠点は東京。8歳~40代までの男女約50人が登録。練習場所は、東京都障害者総合スポーツセンター。練習は月1回で約2時間。同年には、ICUチアリーディング世界選手権大会でもスペシャルオリンピックス部門ができた。