『食を極めて、レースを極める』と言っても過言ではないくらい、食事はパフォーマンスを発揮するために大切なことだ。
今回は私自身の経験談と実際に取り入れていた食事法についてお話ししたいと思う。
まず、トライアスロンをはじめる前の陸上時代の食事においての失敗例から。
今は、「たくさん走って、たくさん食べる」ことが常識となっているが、少し前までは、食事より『減量』の時代だった。実際、私も1ケ月で50キロから42キロに落とした経験がある。その時はエネルギーとなる米やパン類は摂取せず、豆腐や納豆、ささみ等の低カロリー高タンパクの食材のみ口にしていた。もちろん、ジュースやお菓子、あめ一粒も摂取せず『減量』に励んだ。
その効果は絶大でみるみるうちに体重は減り、その減り具合がうれしくもなり、いつしか『速くなるための練習』ではなくサウナスーツにウインドブレーカーを着込んで『減量のための練習』とまでなっていた。
『減量』したことで速くなったか?と言われると、私は速くならなかった。
50キロでおいしくご飯を食べている時も、42キロで食事制限をしている時もタイムは変わらなかった。
結局、足の故障をしてしまい全治2年と告げられたことがきっかけでトライアスロンへ転向した。
そして待ち受けていたのは20キロのリバウンド。体重は3カ月余りで62キロになってしまった。リミット体重が42キロだったため、毎日体重測定をしていたストレスが心身ともに疲れてしまった。
その頃の自分自身に、もう少し食に対しての知識があったり、自分の芯を貫いて競技ができていたら結果は違かったかもしれないが、当時はその余裕がなかった。
トライアスロンを始めて、食に対する意識を変えた。そのきっかけになった言葉が、当時のコーチから『なんでも好きなもの食べて!シュークリームでもケーキでも食べていいよ!そしてたくさん練習しよう!』だった。
62キロの選手に対して、よくその言葉が言えるな!と内心思ったが、その声かけで不思議なことに暴食がストップした。
トライアスロンのトレーニングは1日長い日で8~9時間動く時がある。
スイム2時間、バイク3時間、ラン1時間半、そしてまたスイム2時間というトレーニングをこなすためにはスタミナが必要だ。そして、筋肉が疲労、破壊されるため、食事が大切になる。
これまでは『減量=食事』だったが、『パフォーマンス向上=食事』へ意識が完全に変わった。
そして食事を取るるたびに罪悪感があった感覚がなくなり、身体作りのためにしっかり摂取するという感覚に変わったことで、身体も心も健康になった。
いつしか減量のために乗っていた体重計にも乗る頻度が減り、目的も体重が減らないかを確認するための手段となっていた。
まだまだ『パフォーマンス向上=食事』が当たり前にできている人ばかりではないはずだ。特に身体が変化しやすい年頃の女性選手や月経不順に悩む選手にとって食事はストレスになりやすいと思う。そういう悩みを抱えている選手には、思い悩まずにまずは楽しく食事をすることからはじめてほしい。
パフォーマンス向上には食事が大切。そして、食事は心も満たしてくれるはずだ。
下記はトライアスロンをやっていた頃の食事法だ。一例ではあるが、持久系アスリートの方やレース前に緊張しやすい方の参考になれば幸いだ。
【冬期トレーニング期の食事例】
朝練習前
バナナ
朝練習後
ご飯、納豆、卵
午前練習後
ご飯、肉や魚など、野菜
午後練習前
おにぎりやパン、カステラなど
夕方練習前
タンパク質を含むシリアル系食品、おにぎりやパン、カステラなど
夕飯
ご飯、肉や魚など、みそ汁、納豆、野菜
●ポイント
トレーニング前は消化がよくすぐにエネルギーになりやすい食材を食べること。トレーニング後は良質なタンパク質を摂取して筋肉の回復を促す。
タンパク質は一回に体に吸収できる量が限られているので、こまめに摂取することを意識する。
疲労がたまっていたり、高強度のトレーニング後は消化のよいものを摂取して胃に負担をかけない。
【試合前から前日まで】
●ポイント
3日前から炭水化物を多めに摂る。
(カーボローディングは4~6日前から主食をはじめとした糖質を多く含む食品の摂取量を控え、その分、脂肪を多く摂るようにするが、私の場合はそこは気にせずに食事をしていた。やりたい方はご飯をいつもの2分の1、おかずを多く摂る)
内蔵負担を軽減するため、前日は食べ過ぎない。
特に緊張している場合には胃に残る食材(青魚や油物等)は避ける。
【試合当日】
●ポイント
消化のよいもの、食べ慣れているものを摂取する。
私の場合はスタート3時間前までにカステラ、うどん、おにぎり、餅などの炭水化物をメインに摂取し、1時間前にバナナを食べていた。『絶対に◯◯を食べなければならない』と決めつけはせず、自分が食べ慣れているものを摂取することが1番大切。
また、固形物が苦手な方はゼリー飲料などでエナジー補給をおすすめする。
(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)







