今月17日~19日に、飛び込みの日本選手権が開催された。会場となった栃木県・日環アリーナ栃木は、今年オープンしたばかりの新しいプール。飛び込み競技には欠かせない、ドライランドと言われる陸上練習場もとても充実しており、選手たちにとっては最高の環境での大会となった。


飛び込みの日本選手権が開催された日環アリーナ栃木
飛び込みの日本選手権が開催された日環アリーナ栃木

今回も注目が集まったのは、飛び込み界の若きホープ玉井陸斗(15=JSS宝塚)だ。

東京オリンピックでは、最年少で10m高飛び込みに出場。オリンピックが終わった直後には「次は板飛び込みにも出場したい」と3年後のパリ大会に向けて意欲を示していた。

ここ数年で身長も伸び、体格も良くなった。筋肉量が増えた分、体重も増加。以前に比べて板が踏めるようになっていた。まだ入水の安定性には課題が残るものの、世界トップレベルの種目をそろえ、板飛び込みでも周囲にしっかりと存在感をアピールしていた。

そして、女子でひときわ目を引いたのは、山崎佳蓮(高知SC)だった。高校3年生の彼女は、162センチという高飛び込みの選手としては珍しい長身の選手。手足の長さを生かしたダイナミックな演技が持ち味だ。彼女の一番のすごさは、難易度の高さ。今回、女子高飛び込みに出場していた選手の中で、最も高難易度だったのはもちろん、世界で見ても、ここまで難易度の高い技をそろえることが出来ている選手は少ない。長身でありながら、しっかりと自分の身体を使いこなし、高さ、回転のスピード、そして美しさを失う事なく堂々と演技していた。

決勝では、第4ラウンドまで首位をキープ。惜しくも最終ラウンドで、東京オリンピックに出場した荒井祭里(JSS宝塚)に逆転を許し、2位となった。しかし、これからの日本の飛び込み界を引っ張っていく選手の1人であることは間違いない。今後の活躍が楽しみだ。


トランポリンなども備えるドライランド
トランポリンなども備えるドライランド

今大会も無観客試合となったが、東京オリンピックに出場した選手全員が参加。どの種目も見どころのある試合となった。しかし、大きな試合を終えたばかりの選手たちからは、疲れも見えた。

私も経験したが、オリンピックという大舞台を終えた後の、心身の疲労はそう簡単に抜けるものではない。本来であれば、まだゆっくりと休みたい時期だ。そんな中で、今回の日本選手権に臨んだ代表選手たち。オリンピック選手だというプライドと、優勝して当たり前というプレッシャー。それに加え、周囲の期待をいつも以上に感じながらの試合だったのではないだろうか。

追う側と追われる側。さまざまなプレッシャーと戦い、打ち勝つことで磨かれる強さがある。

3年後に向けて、新たな戦いが始まっていることを感じた。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)