テレビに、カーリングの中継が流れている。混合ダブルスの日本代表決定戦、北京冬季オリンピック(五輪)につながるゲームだ。東京五輪が終わったばかりだと思ったら、すでにスポーツ界は冬季五輪へと向かっている。

17日にはIOCのバッハ会長が東京大会同様、北京大会でも選手団に新型コロナのワクチンを提供すると表明。同日には、同大会の聖火採火式(ギリシャ・オリンピア)が10月18日に行われることも明らかになった。東京大会同様に無観客で、ギリシャ国内でのリレーは行わないという。

新疆ウイグル自治区などへの中国政府の対応を巡って大会ボイコットや放送の自粛を求める声が世界各地であがる。さらに、まだまだ世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスの影響も心配になる。大会そのものが中止になることはないだろうが、どんな大会になるかは想像もつかない。

観客についても、組織委員会からは何の発表もないまま。中国政府は大会時の海外からの入国者を3万人以内におさえる計画だが、これだと選手、スタッフ、関係者らでいっぱい。少なくとも海外からの観戦者を受け入れる余裕はない。

国内の観客だけを入れる可能性もあるが、これも簡単ではない。15日には内陸部の西安で「全国運動会」が始まった。日本の国体にあたる国内最大規模のスポーツイベントは、そのまま北京大会のテスト。厳格な感染対策をとった上で観客を入れて行い、その検証によって北京大会の観客の有無などを決めるという。

観客だけではない。選手や関係者にとっても、厳しい現実が待つ。大会組織委員会は来月にも感染対策用の「プレーブック」を発表する予定だが、内容は東京大会以上に厳しいものになりそう。入国時の検査や証明書提出はもちろん、その後も隔離など行動を制限されることは間違いない。

東京大会では厳しい制限を設けながら、ある程度の「遊び」はあった(これが批判されたけれど)。ここまでの中国の新型コロナ対策を見ると、一切の妥協を許さない厳しいものが目立つ。「徹底してやる」のは五輪でも変わらないはず。選手には、競技とは別に厳しい闘いが待っている。

羽生結弦の連覇、高木姉妹らのメダルラッシュ、カー娘の活躍…、平昌五輪に日本中が沸いてから4年たった。ただ、今度の北京大会はこれまでの五輪とは決定的に違う。東京大会同様に「新型コロナ下での特別な大会」になるからだ。選手への肉体的、精神的な負荷も増す。競技に集中できない可能性さえある。

開幕まで4カ月半、IOCが高く評価した東京大会をベースにしながらも、観客の有無や感染対策など少しずつ全体像が見えてくるはずだ。大詰めを迎える選手の代表争いとともに、どんな「特別な大会」になるかも注目していかなければと思う。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)