花園は特別な場所です-。

報徳学園(兵庫)は1月7日、準優勝で全国高校ラグビー大会を終えた。

東福岡に敗れたが、初めて決勝の舞台に立った。

チームが新しい歴史を刻んだ大会の開幕前、ロックのジョーンズ日光(3年)が心の内を明かしていた。アメリカ人の父と日本人の母を持つ、ハワイ育ち。今大会で初めて花園のメンバー入りを果たしたジョーンズは、「特別な場所」に向けて胸を躍らせていた。

中学1年時に競技を始めた。10歳でハワイから日本に移住し、東京の千歳中学に入学。バスケットボール部の見学に行く道中、ガタイのいい先輩に「1回練習来てみてよ」と声をかけられたことがきっかけだった。ラグビー部は選択肢になく悩んだが、姉に背中を押されて練習に参加。そこで競技に魅了され、入部を決めた。

あのときの選択に間違いはなかった。

「お互いへのリスペクトと、一緒に試合できることの感謝が外から見ててもわかる」

相手にも、レフェリーにも、敬意を示して接するスポーツ。「やってる人みんな優しい。ほんまのスポーツマンシップが味わえて、僕ももっといい人になりたいと思った」。ジョーンズは恥ずかしそうに笑った。

高校でも迷わずにラグビーの世界へ。複数の学校から声をかけられたが、関西の伝統校・報徳学園を新天地に選んだ。

「お母さんが兵庫県出身で。お母さんのためでもあるし、初めて練習を見に来たときに先輩と後輩の関係が楽しそうだったので」

先輩に対して、少し苦手意識があった。現在は関西なまりもにじませながら流ちょうに日本語を話すが、中学生の頃はまだ日本語がたどたどしく、敬語を使うのが難しかった。カタコトの日本語を受け入れられず、先輩からは「なめてる」ととられた。本当は礼儀正しい性格。思いを伝えられず、悩んでいた。

報徳学園は違った。練習は厳しいが、ホイッスルが鳴れば学年問わずに会話を弾ませる。「ここなら気楽に行けるかも」。

その読みは当たった。全国各地から来る選手にも寛容で、信頼できる仲間。ジョーンズがお守り代わりに持っている物も、仲間からのプレゼント。高校2年の終わりにフランカー石川莉央(3年)からプレゼントされた沖縄のご当地ライダーのフィギュアだ。ふざけておねだりしたのに、本当に買ってくれたもの。「ずっとお守りとして使えよ」と言われ、律義にかばんの中に潜ませている。

「ライダーの力を使って勝ちたいですね」。その効果が出たのか、初出場の2回戦でチーム初トライ。出場したのはこの1戦だけだったが、中学からの夢の舞台で、見るものの記憶に残るプレーを遂げた。

卒業後は青学大に進学する。得意の英語で文学部に合格。将来の夢はまだ決まっていないが「英語の教師とかもいいな」と夢を膨らませる。ラグビー指導にも興味津々で「僕は教えるのに向いてる。細かく言われて考えてできるタイプなんで」と声を弾ませた。

たった数年で日本語を完璧にマスターし、花園準優勝チームへのメンバー入りも果たした努力家。今後も競技を続けるかは未定だが、次のステージでもきっと輝くはずだ。【竹本穂乃加】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆竹本穂乃加(たけもと・ほのか)1999年(平11)9月8日、大阪・泉大津市生まれ。明大卒。22年4月に入社して、同5月に報道部配属。スポーツや芸能を取材。