<爲末大学:インターハイ編(2)>
インターハイは陸上を含むいくつかの種目では「高校生の大会」ではなく、「高校の大会」だというのはご存じだろうか。高校の部活動に所属せず地域のクラブチームで活動している選手は、たとえ高校生であってもインターハイには出場できないことになっている。
現在、日本の少子化はとても速いスピードで進行していて、私たちの時代とは比べものにならない。高校生の数は20年ほど前の半分近くになっていて、小中高を合わせた廃校は毎年500校も出ている。
例えばサッカーが盛んな高校と、野球が盛んな高校がある。そこでバスケットボールをしたい子がいても、人数が足りなくてチームが組めないことすらある。また、少子化に伴い教員の数も減っていて、顧問が足りずチームが組まれていないことも多い。好きなスポーツを選ぶことは、現在の仕組みの中ではできない。
この状況をさすがに文部科学省も懸念していて、学校単位ではなく、地域単位でスポーツを行う地域型スポーツクラブを十数年前から推進している。地域型であれば、複数の高校から集まったメンバーでチームを組める。たまたま行った高校にある部活からしか選べないのとは違って、地域であれば好きなスポーツを選ぶことができるし、専門の指導者も常駐させることができる。
ところが実際に地域クラブに所属してしまった高校生は、インターハイには現行のルールでは出場できない。結果として学校のチームに所属しなければならないのだが、学校にチームすらない場合、子供たちはそのスポーツでインターハイを目指すこと自体を諦めなければならない。
数年前、ある高校生からメールが届いた。
「地域のスポーツクラブで練習してきたけれど、インターハイには出場できないことを知りました。最後のインターハイにはなんとか出場したいが、学校で部を作るのは今からでは間に合わないと言う。なんとか助けてもらえませんか」
メールをしたら、丁寧な返事が戻ってきた。
「つい数日前にインターハイの出場申請は締め切られました。協力していただいて感謝しています」
スポーツ基本法が制定されたのは2011年だ。その中にこう書いてある。「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利である」。
インターハイは変わるべきだと思う。すべての高校生に、好きな環境でスポーツをする権利を。(為末大)