五郎丸が男泣きした。エディー・ジャパンが米国に勝利し、有終の美を飾った。初の1大会3勝という快挙。チームの快進撃を支えたFB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)は、達成感よりも8強を逃した悔しさから涙を流した。3勝しながら1次リーグで敗退したチームは初めて。それでも19年の自国開催に向け、日本は世界に大きな衝撃を残し、大会を去った。

 右目を充血させてミックスゾーンに現れた五郎丸は「まあ、なんですかね、曇り空みたいな感じで、達成感はない」。W杯を終えた心境をこう表現した。そして「準々決勝、行きたかったですね」。試合直後のテレビインタビューでは言葉が出ず、涙を流した。W杯3勝という快挙より、悔しい気持ちが一番強かった。

 ベスト8に行けば、ジョーンズ・ヘッドコーチの母国オーストラリアと、ラグビーの母国イングランドの本拠地トゥイッケナムでの対戦だった。「人生観変わっていたでしょうね。トゥイッケナムで10万人の中でプレーしたら」。そして「我々の目標は…」と言いかけ、言葉に詰まった。

 キックは最終戦でも健在だった。25-18と詰め寄られた後半37分、約40メートルの距離から冷静に決め、勝利をたぐり寄せた。13得点を挙げ、今大会2度目のマン・オブ・ザ・マッチにも「このマン・オブ・ザ・マッチはみんなの…」。1次リーグで決めた13PGは大会ランキング1位で、58得点は2位。「みんながチャンスをくれ、得点できたことがうれしい。チームのみんながヒーロー」と、仲間への感謝の気持ちがあふれた。

 「この4年間のことも思い返したが、ずっと目標にしてきたW杯という舞台を終えて、チームメートとまた別々の道に行くというさみしさの方があります」。今年4月からは宮崎でほかに例を見ない長さの強化合宿をこなした。家族と過ごす時間など「いろんなものを犠牲にしてきた」。合宿中は毎朝5時起きでウエートトレーニングに励んだ。「エディージャパンが始まった時の上半身裸の写真をみたらびっくりですね。ガリガリで。そんな状態から始まった」とほほ笑んだ。

 一夜明けた12日、五郎丸は英チェルトナムの宿舎で4年後のW杯について言及した。「ゆっくり考えたい」としながらも、「今までで一番幸せな時間だった」と言った後に「日本大会に出場する選手には、これ以上の幸せを感じてほしい。8強という我々が打ち破れなかったところにいってほしい」。自分は今回が最後だとばかりに話した。

 代表デビューから10年で到達したW杯。自身の持つ通算最多記録も700点を超えた。日本代表史上最高のFBと称される男は、今大会1人でその位置を守りきった。目標のベスト8こそならなかったが、五郎丸は自らの責務をまっとうした。【岡崎悠利】