【ブダペスト=益田一弘】男子200メートルバタフライで、瀬戸大也(23=ANA)が1分54秒21で銅メダルを獲得した。この種目で日本人初の金メダルこそならなかったが、今大会の日本勢では女子200メートル個人メドレー銀の大橋悠依に続く2つ目のメダル。3連覇のかかる男子400メートル個人メドレーに弾みをつけた。

 笑顔はない。瀬戸はゴールすると、電光掲示板を見ながら、唇をかみしめた。準決勝はトップ通過。この種目で日本人初の金メダルはならなかった。それでも、リオ五輪では5位とメダルを逃した種目での銅メダル。結婚後初のメダルには価値があった。

 2年前と同じ過ちは繰り返さない。15年カザニ大会は準決勝で潜水が15メートルを超える違反を犯した、と不安になった。冷静さを失って決勝6位、200メートル個人メドレーは準決勝で敗退した。今大会は準決勝を全体1位で突破。しかも自己ベストの1分54秒03という好タイムだった。「ここ(準決勝)で15メートルをオーバーしたと思ってあわてて泳いでそこから崩れた。そういうことがないように意識している」と、引き締まった表情で口にした。

 勝負のために甘さは、排除した。リオ五輪で400メートル個人メドレーは萩野が金、瀬戸が銅。60年ぶりのダブル表彰台の快挙に沸く中で、瀬戸は東京五輪について「公介(萩野)とワンツー」と口にした。だがその言葉を、関係者から「公介とワンツーって、逃げているんじゃないか?」と指摘された。何が何でも自分が1番、と意識が希薄なことに気づいた。そして4月の日本選手権。同種目で萩野に勝って初優勝を飾ると「世界選手権でも公介とワンツーを決めたい。もちろん僕がワンで」と力強く宣言した。

 習慣も見直した。瀬戸は、75キロ以下を理想体重としている。ただ知人から差し入れをもらうと、相手にお礼をいうためにも、ついつい食べ物を口にしていた。それは優しい性格の裏返しだが、アスリートとして決してプラスとはいえない。そんな部分も少しずつ変えている。3連覇を狙う400メートル個人メドレーだけでなく、複数種目で活躍する。しかしこの日、金メダルは逃すことになった。

 今月上旬にはフランス合宿中に首を痛めた。ブダペスト入り後は右肩に痛みがあったが「神様が『肩を意識して、フラットに泳げ』といっているのかな」と、持ち前のポジティブ志向を貫いた。3連覇を狙う400メートル個人メドレーは、大会最終日の30日に行われる。

 ◆瀬戸大也(せと・だいや)1994年(平6)5月24日、埼玉県生まれ。6歳の時に水泳を始める。埼玉栄高時代は高校総体で3年連続個人メドレー2冠。13年4月に早大進学し、13、15年世界選手権男子400メートル個人メドレー連覇。昨夏のリオ五輪は同種目で銅メダルを獲得した。今年5月、飛び込みの馬淵優佳と結婚。174センチ、75キロ。