男子フリーでショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(20=トヨタ自動車)がフリー1位の186・47点の合計283・30点を記録し、2連覇で18年平昌(ピョンチャン)五輪出場を決めた。右足負傷の羽生結弦(ANA)が2年連続欠場の中で17年世界選手権2位の実力を示し、初めての五輪切符をつかみ取った。2位は合計267・15点の田中刑事(23=倉敷芸術科学大大学院)で、3位は合計258・41点の無良崇人(26=洋菓子のヒロタ)。平昌五輪は来年2月9日に開幕する。

 演技を終えた宇野が、手のひらを合わせて謝罪のポーズを取った。2連覇と初の五輪にも笑顔がない。「期待に応えられる演技が出来ていないので、申し訳ない気持ちでいっぱい。結果をあまりのみ込めないぐらい、今日だけじゃなく(物足りない演技が)続いてしまっているのが情けない」。次々に反省の言葉が続いた。

 4回転ループ成功で始まった前半は快調だった。だが、中盤の4回転フリップで転倒し、初挑戦のダブルアクセル(2回転半)-4回転トーループは2つ目が2回転にほどけた。音楽の解釈など演技構成点5項目が全て10点満点の9点台と評価を受け、結果的には他を圧倒したが喜べない。

 それでも「正直、跳ぶ前から失敗するのは分かっていた」と振り返る2回転半-4回転に「構成を変えるのは自分の中で逃げ」という信念で挑んだ。自らの価値観を簡単には曲げない頑固さで、ここまでの地位を築いてきた。そのスタイルは「大嫌い」と公言し続ける野菜に対しても通じる。

 「僕の考えは体が本当に必要だと思ったら、勝手に食べたくなる。そうじゃないので、今は体が必要と思っていないんじゃないかな。健康診断を受けても何も問題がない。必要になったら自然と食べたくなるものだと思うので、それまで僕は気長に待っています」

 他のアスリートの食事改善を例に出されても、考えはぶれない。海外遠征では「ステーキしか食べていない」と偏りがより顕著になり、2キロほど痩せることもある。それほどまでに自分を貫く宇野が大会前に「みなさんの期待に応えたい」と誓った。その言葉を体現できないことを悔やんだ。

 金メダルの期待がかかる平昌五輪。その出場権を得ても宇野のスタイルはぶれない。「次がどの試合か分からないけど、一番近い試合でいい演技をしたい」。「五輪」という言葉がなくとも、そこに強い決意をにじませた。【松本航】