最後は「気力」で負けた。大会3連覇を狙った100キロ超級の王子谷剛志(25=旭化成)は決勝で、原沢久喜(25=日本中央競馬会)に延長の末、反則負けした。

 同学年対決となった9分16秒の激闘。王子谷は得意の大外刈りで攻め続けたが、最後は3つ目の指導を受けて勝負あり。ぼうぜんとして畳隅から約3分、立てなかった。試合後、途中で脱水症状に見舞われことを明かし「ぼーっとして力が入らなかった。執念と『勝ちたい』気持ちだけでやったけど、技に力が伝わらなかった。最後、耐えきれなかったのは自分の弱さが出た」と言葉を振り絞った。

 世界選手権(9月、アゼルバイジャン)最終選考や3連覇を意識せず、今大会の「優勝」のみを考えた。準決勝敗退した8日の全日本選抜体重別選手権後は、今大会にピーキングを合わせるため「気持ちの作り直し」に力を入れた。

 趣味は読書で、心に響いた言葉をスマートフォンにメモするのが習慣。その中の「莫妄想(まくもうそう)」を時折、見返した。禅語で妄想せずに目の前のやるべきことをやるという意味だ。

 「選抜から全日本までの3週間で急に強くはなれない。普段通りの稽古して、しっかり3食食べて、良く寝た。全日本に懸ける思いは自分が一番。『気持ちだけは絶対に負けない』という強い覚悟で臨む」と話していた。

 23日には今大会を神聖な気持ちで挑むため1000円カットで丸坊主にした。会場からは「王子谷~」「タケシー」などの大声援が飛んだ。その言葉を胸に9分16秒、闘った。しかし、最後は脱水症状の不運もあったが、「気力」で負けてしまった。

 「今は何も考えられない…。苦しい思いをするのも(20年東京五輪までの)あと2年。最後は笑って終わりたい」

 気持ちを立て直して、必ず再起することを誓った。【峯岸佑樹】