20年東京オリンピック(五輪)の強化を目的に新設された今大会で、女子は第一人者の野口啓代(29)が初代女王に輝いた。スピード3位、ボルダリング1位、リード2位の総合ポイント6点で優勝した。伊藤ふたば(16)は9点で2位だった。

 野口は自分を奮い立たせた。伊藤と総合点で並んだ最終種目のリード。何度も手を離して落ちそうになる場面を耐えながら、165センチの身長ながら174センチの長いリーチを生かして1手1手丁寧に登っていく。15メートルのリード壁頂上付近、38手目のホールド(突起物)をつかむ途中まで登り2位を獲得した。「とにかく優勝したいという気持ちだけだった」とほっとした表情を浮かべた。

 野口にとって、東京五輪と同じ順位決定方式での試合は初めて。「女子は世界で3種目ともできる選手が多いので(総合点で)1桁じゃないと勝てないと思った」と実感。東京五輪の決勝で1日に3種目をこなすことから、今大会も予選、決勝ともに同様に実施した。1日目の予選の疲労は想像以上だった。普段は軽くジョギングなど体を動かして2日目の調整を行うが、「ストレッチもしつつ、ホテルでずっと10時間くらい寝た」と回復に注力した。今大会で体力不足も痛感し、登る練習を積むことで克服をめざす。「3種目を1日ぐるぐるやる練習をやるしかない」。3種目戦える体を作る覚悟を決め、女王はさらに強くなる。【戸田月菜】

 ◆複合の順位決定方式 スピード、ボルダリング、リードの各種目の順位をかけ算し、総合点を算出。点数の少ない順に複合の順位をつける。例えば、スピード5位、ボルダリング1位、リード3位ならば「5×1×3」で15点。同点で並んだ場合は、直接対決で勝っている回数が多い選手が上位となる。東京五輪でも同様の形式で行われる。