16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)競泳男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(24=ブリヂストン)が15日、日本選手権(4月2~8日、東京辰巳国際水泳場)を欠場することになった。モチベーションを保てず、7月の世界選手権韓国大会も事実上断念。レース復帰も白紙で、東京五輪出場は20年4月の日本選手権一発勝負になる。リオ後はけがやライバルの台頭もあって、主要国際大会で優勝なし。大目標の五輪連覇は容易ではない情勢となった。

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萩野が、苦渋の決断を下した。この日、マネジメント会社が衝撃的な日本選手権見送りを発表。萩野は「自分が『こうありたい』という理想と現実の結果の差が少しずつ自分の中で開いていき、モチベーションを保つことがきつくなっていきました。気持ちの回復を待ちましたが、今は競技に正面から向き合える気持ちではないことを受け入れ、今回の決断に至りました」とコメントを出した。

最近は練習の内容がレースにつながらない状態が続いた。平井コーチはレースになると「別人になったみたいで」。メンタルの問題で、2月16日のコナミオープンも精彩を欠き決勝を棄権。病院で検査を受けても異常はなかったというが、同19日からのスペイン高地合宿も回避。国内で調整したが、平井コーチに「今の状況では苦しい」と申し出た。この日、合宿から帰国した平井コーチは「(電話で)さすがに元気がなかった。今は休みが必要。次にスタートした時は自分のために泳ぎなさい、と言った」。これで優勝=五輪代表内定だった世界選手権は事実上断念。ここ1週間は休養。レース復帰について、平井コーチは「白紙です。彼自身が決めること。一番大切なのは彼の意思」とした。

リオ後はけがや体調不良が続いた。リオ銀メダルのケイリシュ(米国)には主要国際大会で連敗。自己ベストの4分6秒05も、0秒15上回られている。ただ何よりも萩野自身がリオ後、世界大会決勝レベルの4分10秒を1度も切れていない。今年の目標に「休まずに泳ぐこと」を掲げたが、無念の欠場。大目標の五輪連覇は容易ではない状況だ。

平井コーチは「普通に考えれば危機的な状況ですが、プラスにすることを考えたい」。萩野は「自分の心ともう1度しっかり向き合いたいと思います」。幼少期から「神童」として、周囲の期待に応え続けてきた24歳。日本競泳界で北島康介しかいない同じ種目での五輪連覇には、自分自身の渇望がわき上がるのを待つしかない。【益田一弘】

◆東京五輪への道 7月の世界選手権韓国大会で金メダルを獲得した選手は東京五輪代表に内定。それ以外は20年4月の日本選手権で日本水連が定める派遣標準記録を突破して2位以内に入った選手が代表になる見通し。リオ五輪前年にあたる15年世界選手権では男子瀬戸大也、女子渡部香生子、星奈津美の3人が優勝=五輪内定を決めている。