【ニューヨーク20日(日本時間21日)=桝田朗】米プロバスケットボールNBAのドラフトが行われ、八村塁(21=ゴンザガ大)がウィザーズから1巡目、全体9位で指名された。日本人がNBAで1巡目指名を受けるのは史上初の歴史的快挙。しかも、スーパースター候補生がそろう中で1ケタ台と高評価を受けた。新人の年俸は指名順に応じて基準額が設定されており、八村は最大約446万ドル(約4億9100万円)を手にするとみられる。

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ドラフトが始まって1時間15分すぎ、ついに運命の時がきた。1巡目の9番目に指名権を持つウィザーズから八村が指名を受けた。4年前、ジョーダン・クラシックの世界選抜としてプレーした、バークレイズ・センターで「影響を受けた」というマイケル・ジョーダン氏が最後にプレーし、共同オーナーも務めていたチームからの指名。チームキャップをかぶった八村に最高の笑顔がはじけた。

「本当に夢みたいでした。すごい感覚に入って。家族が周りにいたけど、やっぱりすごい感覚になりました」と感激した。NBA予備軍といわれる全米大学体育協会(NCAA)の精鋭が集まるドラフト。スーパースター候補の中で、日本人が1巡目、全体9位指名という奇跡を起こした。

ミニバスケットが盛んな日本では遅い、中学1年から競技を始めた。富山・奥田中の坂本穣治コーチから最初に言われたのは「お前はNBAに行くんだ」。野球、陸上と何をやっても続かない八村を本気にさせるためだった。ジョーダン氏の名前も出した。八村の目の色が変わった。

ゴンザガ大に進学後、バスケットと英語の習得に人一倍の努力を重ねた。大学の講義の前にウエートトレーニングをこなし、講義と練習の合間に専属の英会話講師のレッスン。バスケットの練習では、終了の笛が鳴ったあとに、1人黙々と3点シュートを打ち続けた。1年時に先輩から「お前の身体能力は米国人以上」と言われた才能が、大学3年間でNBAチームを振り向かせるほどに伸びた。

ベナン人と日本人の間に生まれ、幼少のころはいじめにも遭った。それでも日本への思いは強い。えんじ色のスーツの左襟には、日の丸のピンバッジを着けてドラフトに臨んだ。「やっぱりボクは日本人としてこういう大きな舞台に立てる。NBAのドラフトは世界でも見られているので、その中でボクの日本の国をしっかり見せないといけないなと思いました」。

毎年ドラフトで選ばれるのは、ほぼ完成されピークを迎えた選手が多い。しかし、八村はNBAでは珍しく発展途上の段階で選ばれた。「ウィザーズはボクの中に伸びしろがあると思って取ってくれた」と、チームに入っても進化する自信がある。日本の歴史を変えた男は、新たなタイプの選手としてNBAの歴史も変えるかもしれない。

▼NBA新人年俸 ドラフト指名された選手の年俸は4年目まで基準額が定められている。ドラフト1巡目全体1位が最も高く、同2位、同3位と順に差がつけられ、基準額の80~120%の間で球団と契約できる。契約は2年目までが保証されている。1巡目9位でウィザーズから指名を受けた八村は約372万ドル(約4億900万円)を基準額に、交渉次第では最大約446万ドル(約4億9100万円)を手にすることになる。2年目の基準額は約391万ドル(約4億3000万円)、最大約469万ドル(約5億1600万円)。契約解除されなければ、4年総額20億円を超える。