【シュツットガルト=阿部健吾】女子日本代表が東京五輪出場枠を確保した。予選で4種目合計161・228点の11位で決勝進出は逃したが、昨年の上位3カ国を除く9位までの条件を8位でクリアした。最終種目の平均台では急きょ出場した初代表の松村朱里(19=ジム・ネット体操教室)が大過失なく粘りきり、緊急事態を救った。

告げられた代打は、世界選手権の日本代表の試合で最も鮮烈な印象だった、あの時の映像とかぶった。松村は予定にはなかった平均台への出場を任されると、11年大会を思い出した。今大会で主将を務める寺本は、跳馬の練習中に負傷した仲間の代わりに急きょ出番を迎えると、日本の窮地を救いロンドン五輪の出場枠獲得に大きく貢献した。「私もあの時と同じだなと思いました。やるしかない」。

3種目目の段違い平行棒を終えた杉原が抱えていた左足首痛を悪化させて、平均台が厳しくなった。田中監督から「頼んだ」の一言で短い時間で準備を始めた。イメージをふくらませ、4番手で登場。ふらつく場面も見られたが、演技をまとめて得点を上積みさせた。「あの時の寺本選手と同じような役割が少しは出来たかな」と微笑した。

現地入り後の会場練習では、ゆかでうまく演技できずに涙する場面もあった。試合になると、ゆかと跳馬でも得点に貢献してみせた。田中監督は「練習を見た段階では大丈夫かなと。ただ、本番に強いというところあり、そこはやってくれるだろうと思っていた」とたたえた。本番力には意志の強さも隠されているかもしれない。長野で育ち、18年3月の高校卒業後もジム・ネット体操教室に通う。強豪大学の誘いを全て断り、「東京五輪が自分の最後。あと2年、この環境でやりたい」と大学に通わない異例の決断は、自らの意志だった。

今大会は5番手として参加した。初代表の合宿で刺激を受け続け、今大会での経験も糧になる。「順位が0・1点で変わる。あらためて大切さを知りました」と、着地のわずかな乱れなどにもこれからは意識を働かせていく。個人としても多くの収穫があった初舞台になった。