【ブリスベン(オーストラリア)=吉松忠弘】世界ランキング4位の大坂なおみ(21=日清食品)が2020年、東京オリンピック(五輪)イヤーの開幕戦を勝利で飾った。同23位のマリア・サカリ(ギリシャ)に6-2、6-7、6-3の2時間7分でフルセット勝ち。開幕戦からタフな激戦をものにした。

2連覇を目指す全豪オープン(20日開幕・メルボルン)の前哨戦で、幸先良く今季初勝利を挙げた。2回戦では同14位のソフィア・ケニン(米国)と対戦する。ケニンとの対戦成績は大坂の1勝2敗。

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東京五輪の年。タフな開幕戦を勝利で飾った大坂は、日本の報道陣へ「明けましておめでとうございます」と第一声。なおみ節で、満面の笑みだ。そして、新年の誓いを「今年は、全ての試合で勝ちたい」と言ってのけた。東京五輪の金メダルはもちろん、前代未聞の年間全勝宣言だ。

その滑り出しとしては、なかなか厳しい相手だった。過去2勝1敗と勝ち越してはいたが、2勝ともにフルセットでの辛勝。4戦目もやはりフルセットとてこずり、新年の誓いがいきなりのピンチに陥った。

それを救ったのが、大坂最大の武器のサーブだ。16本のエースをたたき込んだ。「昨季の終わりに肩を痛めていたから、どうなるか不安だった。でも、問題がなくて満足している」。フィセッテ新コーチも「サーブに救われた」とほっとした表情。苦笑いした。

昨年9月、優勝した東レ・パンパシフィックから「多くのことを学んだ」という。生まれ育った大阪開催、日本で大きな財産を手に入れた。4大大会など大舞台に強いと言われてきたが「東レでも、全てのポイントを一生懸命プレーすることで優勝できた」。100点満点じゃなくても、全ての試合で全力を尽くす。「それが勝ちにつながるの」。道が開けた。

東京五輪でも同じだ。金メダル有力候補として、大きな期待がのしかかる。加えて、東京五輪開催が決まった14歳の時から、日本代表で金メダルを取ることを夢見ていた。自分で自分にも期待する。その重圧を振り払うのも「自分を信じて、どのポイントもファイトするだけ」。夏の東京が酷暑が予想される。厳しい気象条件でつらくても「そうすることが(結果的には)優勝につながる」と全力投球するだけだ。

年頭の誓い、異次元の年間全勝も、実は「不可能だとも分かっている」と冷静に言うが、それでも追い求める。究極の目標を掲げて進む。求めるスタイル、求めるテニスができれば、年間の全勝につながると信じたい。そのテニスを20年初戦から、身をもって証明した。この勝利から、東京への道がつながっていく。

◆テニスの東京五輪出場は 全仏直後の20年6月8日の世界ランキングで、シングルスは各国・地域最大4人まで、計56人が選ばれる。もし欠場者が出なければ、世界ランキングのカットラインは70位前後とみられる。前提として、過去4年間で、国別対抗戦のデビス杯(男子)かフェド杯(女子)で代表に3回以上選ばれている必要がある。大坂はまだ2回で、現状では代表回数が足りておらず、ここを満たす必要がある。

◆ウィム・フィセッテ(Wim Fissette)1980年3月22日生まれ。9歳でテニスを始め、00年でプロ選手を引退。04年に元女王クライシュテルスの練習相手となり、その後、コーチに転身した。過去、クライシュテルスを含む4人の女子選手を4大大会決勝に導き、4度の優勝に貢献している。