スピードスケートの全日本距離別選手権最終日は25日、長野市エムウエーブで行われ、女子1500メートルで世界記録保持者の高木美帆(26=日体大職)が1分54秒81の大会新記録で5連覇を遂げた。1000メートルと合わせて2冠を達成。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、コンディション不良での出場となったが、22年北京オリンピック(五輪)へ向けて、経験を生かした「賢い滑り」で実力を示した。

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高木美が進化を証明した。700メートルを全体3位で通過すると、持ち味の中盤以降で一気にギアを上げてゴール。2位の佐藤綾乃に2秒以上の大差をつけて圧勝。自身が持つ17年の大会記録を0秒63上回った。「ラスト1周はだいぶ脚にきたけど、スピードロスを最小限に抑えられた。現状ではまずまずイメージに近く、無難な感じでまとめられた」と自ら及第点を与えた。

コロナ禍の影響で、例年に比べて滑り込みが少なく、万全に調整できなかった。今夏に負傷した膝に不安も抱え、今大会は500メートルと3000メートルを回避。主戦場の1000メートルと1500メートルで勝負することを決めた。本来のスピードやパワーは戻っておらず、練習不足と認める中で「賢い滑り」を心掛けた。出場レースも2種目に絞ったことでレース1本に対して集中力を高め、過去のレースをイメージしながら、より具体的な戦術を組み立てた。「無理に力を出すのではなく、効率よく、上手にやってみた。新たなトライだったけど、はまった気がした」。

疲労がたまる終盤のフォームも乱れず、豊富な経験をもとにした頭脳的な戦略。自身の国内最高記録には0秒50及ばなかったが、世界女王としての実力を存分に発揮した。4大会五輪出場で日体大時代の恩師でもある青柳徹氏は「深い集中力でオーラさえ感じた」とうなった。

北京五輪へ向けて、例年と異なるシーズンが開幕した。国際大会開催は不透明な状況が続くが、「今大会では良い集中力が持てて、次につながる発見もあった」と、じっくりと3度目の大舞台に照準を合わせている。【峯岸佑樹】