ラグビートップリーグ神戸製鋼の“隠し玉”だ。第2節キヤノン戦(28日、神戸ユニバー)の先発メンバーが26日、発表され、3年目のPR高尾時流(しぐれ、24)が抜てきされた。第1節NEC戦で負傷退場した日本代表PR中島イシレリの代役で、九州共立大から初めて神戸製鋼入りした男がデビューする。

高尾の笑顔はぎこちない。「チャンスです。先発を聞いて、ずっと緊張してましたけど、やることをやるだけです」。福岡・筑紫台高卒で花園経験も大学選手権経験もない。「最初は“僕なんかが入っていいんかな”と思った」と言う。実際、入った当初はスクラムを組んでも何もできなかった。しかし、同じ九州学生リーグの福岡大を出て日本代表キャップ数42を数える平島久照(38)、同キャップ数51の山下裕史(35)ら大先輩PRの指導もあり、メキメキ力をつけた。

ベンチプレスはPR陣最高の150キロ。入部前に焼き肉店でご飯大盛り10杯を平らげた胃腸の強さは、体の強さになった。デーブ・ディロンヘッドコーチ(45)は「あらゆるエリアでいいパフォーマンスができる。有名な大学の出身じゃないけど、みんなビックリすると思うよ」と期待する。

名前は「時流」と書いて「しぐれ」と読む。父がアニメ「幽遊白書」に登場する“魔界の整体師”「時雨」から命名し、漁師の祖父が「雨はいかん」と別の漢字を充てた。日本代表FB山中亮平(32)は「ウチはベテランが多いし、若い選手が上がってきたら、活気が出る」という。チーム事情という時流に乗り、強豪に新たなピースが加わる。【加藤裕一】