女王ENEOSがデンソーを86-62で下し、前人未到の9連覇を達成した。通算26度目の優勝。第31~38回大会を制したユニチカ山崎を超えるV9となった。

渡嘉敷来夢(30)が19得点、18リバウンドの“ダブルダブル”をマーク。1年前のこの大会中に大けがを負って東京オリンピック(五輪)出場への道が閉ざされた日本のエースが、その悔しさを晴らした。大会MVPは東京五輪代表の林咲希が選出された。

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表彰台で本来なら主将が持つ優勝カップを岡本から手渡され、渡嘉敷は高々と掲げた。「みんなと一緒にバスケットができるって最高だなと思った」。うれし涙で目を赤くした。

東京五輪で銀メダルを獲得した日本代表主将の高田真希を擁し、今季Wリーグ無敗のデンソーを退けた。久しぶりの高田とのマッチアップでは体を張って奮闘。1点差で始まった第2クオーターの立ち上がりに高田の得点で逆転されると、すぐさま渡嘉敷がシュートを決めてリードを奪い返した。激しく火花を散らしながら、ほぼ休みなくコートに立ち続けて19得点、18リバウンドと躍動した。

1年前のこの大会準々決勝で、右膝靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った。東京五輪出場を目指してリハビリに励んだが、6月に代表入りを断念。エースとして期待された大舞台に立つことはできず「心が折れそうになった。正直、めちゃくちゃしんどかった」と振り返る。それでも岡本や佐藤ヘッドコーチから電話越しに温かい言葉をかけてもらい「絶対に皇后杯を取りにいくんだと決めた」。

東京五輪での仲間たちの活躍は刺激となった。「結果を出したみんなの姿を見て、絶対に負けたくないと思ったし、その後はどんなにしんどいことも乗り越えられるようになった。自分はこの1年、選手としても人としても成長できたし、最強になったと思う」。困難を乗り越えた日本バスケ界の至宝は、さらに輝きを増した。【奥岡幹浩】

▽大会MVPのENEOS林 びっくりしているのが正直な気持ち。パスをしてくれるみんながいるからスリーを打てている。自分がやってきたことを、これからも継続して出していきたい。

◆国内スポーツ界の主な連覇 プロ野球セ・リーグで巨人が9連覇(65~73年)。ラグビーの日本選手権では新日鉄釜石(79~85年)と神戸製鋼(88~94年)が7連覇。個人競技では、陸上男子ハンマー投げの室伏広治が20連覇(95~14年)、柔道女子の田村(現姓・谷)亮子は全日本体重別選手権で11連覇(91~01年)を達成している。

〇…初優勝を目指したデンソーは、第2クオーター以降じりじりと引き離された。高田は「準備してきたこと、やるべきことをできなかった。フィニッシュを決めきれず悪いシュートになり、相手にブレークを持って行かれた」と肩を落とした。皇后杯はこれで6度目の準優勝。今季無敗を継続するWリーグで、悲願の初タイトルを目指す。