前身のトップリーグで昨季優勝を飾った埼玉パナソニックワイルドナイツ(旧パナソニック)が、今季初戦で白星をつかんだ。開幕2連勝していた横浜キヤノンイーグルス(旧キヤノン)を27-3で下し、3トライ差以上で得られるボーナス点を含めて勝ち点5を刻んだ。当初は東京・国立競技場で7日にリーグ開幕戦を予定していたが、チーム内に新型コロナウイルスの陽性者が出て2試合中止。不戦敗扱いで勝ち点0とハンディを背負ったが、初代王者へと歩み始めた。

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わずか1週間の全体練習でも、埼玉の強みは揺らがなかった。開始4分、自陣インゴールで相手の下に潜ってトライを阻止。3-3の前半17分にも、またボールを置かせなかった。ライン防御では適切な位置に立ち、1人1人が激しいタックルを続けた。相手にトライを許さず、日本代表のSO松田は「ディフェンスは伝統として根付いている。積み重ねてきたことは2週間休んでも崩れない。自分たちを信じて、仲間を信頼した結果」と胸を張った。

記念すべき新リーグ開幕戦は、コロナで幻となった。開幕3日前の今月4日に3人が陽性疑いの判定。陽性者は最終的に31人に増え、チーム活動再開は17日にずれ込んだ。第2節まで中止となり、不戦敗扱いで勝ち点は0。5月まで続く戦いで上位4チームに入らなければ、初代王座の可能性が消える。それでもフッカー坂手主将は「(シーズン)初めで良かった。あとは上がっていくだけ」と声をかけ、全員で前を向いた。

課題は多い。攻撃面ではトライ目前でのパスがつながらず、キックの精度で好機をつぶす場面もあった。興行権が協会からチームに移った新リーグ。OBが場内解説として登場し、昨季限りで引退した19年W杯日本代表の福岡堅樹氏(29)に「初戦で多少、コミュニケーションが取れていないところもある」と指摘された。それでも同点の前半36分、相手のこぼれ球を日本代表CTBライリーが拾って勝ち越しトライに結び付けた。チームに根付く細部の徹底が強さを証明する。

気の抜けない戦いは続く。首位東京サンゴリアス(旧サントリー)とは勝ち点9差の暫定8位。次節は29日、敵地で強豪のコベルコ神戸スティーラーズ(旧神戸製鋼)戦を控える。松田は「タイトルを取る。まずは1戦1戦積み重ねないと、その先はない。最後、笑って終われるようにやりたい」と言い切った。王者の真価はここから示す。【松本航】

 

横浜は開幕3連勝を逃した。前節神戸戦で55-21と大勝し、勢いに乗って臨んだ一戦。前半8分にFB小倉のPGで先制したが、好機を何度も封じられた。沢木監督は「(相手の)経験ある選手のうまさで勢いに乗れなかった。いい勉強をさせてもらった」。大規模噴火が発生したトンガ出身の日本代表NO8マフィは、家族と連絡が取れたといい「今日はいつも以上にトンガの国旗が見られた」とファンの思いに感謝した。