東京オリンピック(五輪)の競泳男子背泳ぎで2つの金メダルを獲得したロシアのエフゲニー・リロフ(25)が、18日にモスクワで行われたプーチン大統領主催のクリミア併合8周年記念コンサートに出席したことで、水着メーカー大手の英スピードから契約を解除されたことが明らかになった。

ウクライナや西側諸国はクリミア半島の併合を認めておらず、100メートルと200メートルで2冠に輝いたリロフが他7人のロシアのトップアスリートと共に登壇したことを受け、スピードはスポンサー契約の解除を決めたという。

スピードは声明で、「ロシアのウクライナへの侵攻を強く非難し、紛争の影響を受けたウクライナの人々、アスリート、我々のチームメートと連帯します」と述べ、リロフが集会に参加したことを受けて即座に契約を解除したと説明。契約解除に伴い、未払いの契約金は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に寄付することを明かした。

昨年9月にプーチン大統領と握手する写真をインスタグラムに投稿していたリロフは集会で、ウクライナ侵攻後に戦車や車両などの識別記号として使われ、ロシア軍の象徴になっている「Z」の文字を胸にあしらった上着を着用していた。

国際オリンピック連盟(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)などがロシアとベラルーシ選手団の国際大会出場を禁止する中、国際水泳連盟(FINA)は中立な立場としての個人参加を両国の選手に対して認めている数少ない団体の1つであるため、リロフの行動によってFINAに対しても批判の声が上がっている。FINAは集会の参加者の中にリロフがいたことに非常に失望しているとコメントし、「この問題についてさらに調査している」と声明を出している。

集会には他に北京冬季五輪スキー・クロスカントリーで3冠を達成し、旧ソビエト連邦時代の代表ユニフォームと見られるものを着用した写真をSNSに投稿して物議を醸したアレクサンドル・ボルシュノフや北京五輪アイスダンスで銀メダルを獲得したニキータ・カツァラポフとヴィクトリヤ・シニツィナらがZのマークをつけて出席していた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)