少林寺拳法は、女子単独演武で松本みのり(富良野2年)が初優勝し、2年連続全国大会出場を決めた。昨春の高校選抜女王で、今春も準優勝している飯間蒼野(札幌北陵3年)、19年全国中学準優勝の大槻果穂(北海学園札幌3年)の実力者相手に、1点差で競り勝った。今春の全国選抜を制した女子団体メンバーとしても優勝に貢献し、2種目制覇を果たした。

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全国トップとの緊迫した戦いを制し、松本が初めて女王の座に立った。決勝は大槻、飯間の演武が終わり、最後から2番目に登場。1分23秒間、指先まで神経を研ぎ澄ませた渾身(こんしん)の演武で、267点をたたき出した。1学年上の難敵とは、わずか1点差。「誰かに負けないというより、自分の1番の演武をすることだけを考えた」と振り返った。

元全国中学王者が悔しさをバネにはい上がってきた。実家は富良野市内でアスパラガス農家を営む。練習熱心な上に、疲労回復に効果があるアスパラギン酸豊富なアスパラガスを幼少期からたくさん食べて成長。中学1年で全国中学の単独演武優勝を果たした。だが2年時は6位、3年時はコロナ禍で中止。「高校でもっと強くなって、もう1度日本一に」と強豪、富良野少林寺拳法部に入った。

昨年は1年で高校総体出場も11位。今春の高校選抜道予選は飯間、大槻に次ぐ3位に沈み全国切符を逃した。「なんとしてもインターハイで勝ちたい」。今大会前、通常夜稽古のない木曜も、元高校王者の青木賢隆部長(53)に志願して特訓を重ねても、なかなか不安をぬぐえなかった。

食事も喉を通らず、思わず涙するほど苦しむ松本に、大会直前の9日、17年総体女王のOG中野なつみ(明大3年)からラインが届いた。「頑張ってきた自分をほめていい。自信を持て」。松本は「あこがれの先輩の言葉に救われた。思い切っていこうと気持ちを切り替えられた」と感謝した。

2年生が全国レベルの3年生に勝ち予選突破。青木部長は「全国でも優勝を狙う力はある。このインターハイの結果が来年への大きなポイントになる」。今夏、初の個人タイトルをつかみ、地元北海道で開催される23年高校総体にも、弾みをつける。【永野高輔】

◆松本みのり(まつもと・みのり)2005年(平17)8月30日、富良野市生まれ。富良野扇山小4年時に富良野光明寺道院で少林寺拳法を始める。富良野東中1年で全国中学単独演武優勝。2年時は6位。昨夏の高校総体は単独演武11位。今春の高校選抜は、女子団体メンバーとして全国優勝。家族は両親と姉2人、兄。好きなお笑い芸人はガンバレルーヤ。156センチ、50キロ。

<女子団体 富良野4連覇>

女子団体は今春の高校選抜を制した富良野が4大会連続(中止の20年を挟む)優勝を飾った。副主将の荏原碧(3年)は「勝たなきゃというプレッシャーで、思うように動けないところもあったが、まず全国切符を取れて良かった」と安堵(あんど)した。

団体メンバーの荏原と寿浅(じゅあさ)瑠称(るな、3年)は女子組演武でも初優勝し、女子は富良野が団体、組演武、松本が制した単独演武と、3種目すべて制した。団体、組演武と2冠の寿浅は「絶対勝つと練習してきたのでうれしい。選抜の組演武はミスをして6位。全国では反省を生かして、優勝を目指したい」と先を見据えた。

青木部長は「インターハイは団体だけでなく複数種目で優勝を狙えたら」。部員16人中で中学以前からの経験者は2人だけ。高校から始め着実に力をつけてきた努力家集団が、全国タイトルを目指す。

<男子組演武 東蓮翔、藤川峻が初V>

男子組演武は、今春の高校選抜で準優勝した富良野の東蓮翔(れんと)・藤川峻(ともに3年)が初優勝した。息の合ったキレのある動きと、気迫のこもった表情で2位に14点差をつけた。藤川は「まだまだ足りないところもある。全国までに課題を修正したい」。東は「順位よりまずは修練が大事だが、やるからには、全国でも2位を引き離して、優勝を目指したい」と意気込んだ。

◆男子単独演武初優勝の小川大凱(たいが、札幌あすかぜ3年) 練習でやってきたことを出せて良かった。全国ではもっと質の高い演武を見せたい。