14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇王者で、今年7月にプロ転向した羽生結弦さん(27)が夢を現実にした。約90分間の初の単独アイスショーを終え、プロの第1歩を踏み出した羽生さんが公演後、報道陣の取材に応じた。

主な一問一答は以下の通り。

-演技中の感情は、競技会と違ったものだったか

「『SEIMEI』に関しては、平昌五輪を思い出しながらやらせていただきました。方針としては、4分7秒ほどのものになっていて、ジャンプの本数も(試合では7回が5回に)少なくなっていますが、あえて、プロだからこそできる3A(トリプルアクセル=3回転半)3連発もやってみました」

「ものすごく緊張しましたし、試合だったら目の前にジャッジの方がいるんですけど、大勢のお客さまが目の前の目線にいるっていうのは、自分の中では試されているなって思いましたし、自分自身も試されてはいけないなと感じました。いい緊張感でした」

-体力強化や映像の準備など大変だったことは

「まず、体力強化はホント大変でした。(約90分間を)頭から全て通す、っていうのを5回ほどやってきたんですけど、やっぱり普通は1つのプログラムに全力を尽くし切ってしまうので、この後に滑るっていうのが考えられなかったんですけど、何とかここまで体力を続けることができたと自分では思っていて」

「あとは表現したい世界や、演技と演技の間のVTRとかにストーリー性を、物語を、皆さんに伝えやすくする作業、自分が美とするものが伝わるように編集したりとか、今日の朝までかかって出来上がったものなので」

「まだまだやりたいことや、こうできたかなと思うところもありますが、自分1人ではできなかったですし、自分の意思をここまで尊重していただきながら、こうやって皆さんが心を1つにして動いてくださっていることは、普通のアーティストとしてはないことだと思うので、今までのアマチュア時代に誠心誠意やってきて頑張ってこられてよかったと思います。またあらためて、これからも皆さんと頑張っていきたいと思います」

-今後はどのような物語になると思うか

「プロ転向の記者会見でも言ったかもしれないですけど、プロだからこその目標って、実は具体的に見えてないんです。こういうことって、僕の人生史上初めてのことなんですよ。僕、4歳のころから五輪で金メダルを取るっていう目標があった上で生活してきたので、ちょっと今、中ぶらりんな感じではあります」

「まずは、このプログラムを毎日毎日、成功させるために努力していったこととか、今日は今日で1つ1つのジャンプや演技に集中していった、そういうことが積み重なって、新たな羽生結弦というステージになっていったり」

「また積み重なっていくことで、新たな自分の基盤ができていったりする。今できることを目いっぱいやって、フィギュアスケートの限界を超えていけるように。それがこれからの僕の物語になったらいいな、って思います」

-「ファイナルファンタジー10」の世界観を「いつか終わる夢」でどう表現したか

「(ゲームが)全く分からない人に伝えるのは難しいんですけど、魂と一緒に舞っていたり歌っていたり感情を表現していたり。幻想的な風景の中、水の中にいたり、っていうシーンもあるんですけど、MIKIKO先生と演出の相談をして、参考にしながら作っていきました」

「僕自身も、皆さんの思いっていうのは、魂を込めて応援してくださっている人もたくさんいるんだなっていう。皆さんの思いみたいなものが、光っていて。『ノッテ・ステラータ』の時、満天の星空みたいだなって言ったことがあるんですけど、今回のプログラムは、皆さんの応援の光がすごくまぶしくて。でも、皆さんの思いとともに一緒に滑っている。自分はもう見たくない。でもまた一緒に滑る。最終的に、皆さんの思いを集めて滑り続けるんだと表現したつもりです」【木下淳】

羽生結弦さん初の単独アイスショー「プロローグ」1曲目は「SEIMEI」/写真特集