第2戦スケートカナダで初出場優勝し、今大会はショートプログラム(SP)9位と出遅れた渡辺倫果(20=法政大)が、フリー129・71点の合計188・07点をマークした。5位で初のファイナル(12月8~11日、イタリア・トリノ)祖進出の可能性を残した。

冒頭、今季の躍進を支える大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑んだ。そして着氷した。やや乱れ、出来栄え点(GOE)は0・46ポイント減点されたものの、トライした。

「意地でしたね」

前日のSPは、その3回転半を含むジャンプ2本、失敗。「緊張するところまで緊張した」と怖さを知った。代替出場からカナダ大会を制し、ファイナルまで現実的に見えてきたことで「優勝とファイナルの2つを意識して緊張してしまった」からだった。

その後、宇野昌磨がランビエル・コーチから説かれた「完璧は狙うな。1つ1つの先にある」という言葉を記事で見て納得した。

中庭健介コーチを通じ、スケートを始めるきっかけになった荒川静香さんから「倫果ちゃんらしく」とメッセージをもらい、尊敬する高橋大輔からも気にかけられていることを知った。

そしてメンタル面も担当するトレーナーから「重圧なんてない。自分で勝手に作り出しているものだから」と言われ、楽になった。

何より試合前、なごませてくれた中庭コーチに感謝し「たくさんの方々に支えられている。昨晩も思いつめていたけど、安心できた」と精神は安定した。

夢の舞台だっただけに緊張こそしたが、演技直前までバックヤードで大笑いしていた。気持ちを立て直して3回転半を降り「この舞台で、片足で降りられたことは良かった」と喜んだ。

カナダ大会でもSP6位から逆転優勝。「挽回することには慣れている。巻き返すのは苦手ではないし、落ちるところまで落ちたので、明日は死ぬ気ではい上がりたい」と切り替えていたフリー。前日に失敗した3回転ループを2本とも決めたが、フリップやルッツにミスが出た。演技を終えると、舌を出して悔しがった。

「良かったところと悪かったところがハッキリ出た試合。怖さを知ったし、これを今後の大会に生かしていきたい。全日本でも狙いたい場所(表彰台)があるし、来季はGP1戦は確定だろうし…あ、もうシーズン終わったみたい」

そう笑いながら、ファイナル進出の可能性が残っていることを報道陣から聞くと「やめて~」と耳をふさいだ。

その後に出た結果は総合5位。意地の3回転半でファイナル進出の可能性を残した。明るく自分らしく、あとは朗報を待つ。【木下淳】