日本男子テニス界の先頭を走り続けてきた錦織圭(33=ユニクロ)が、いよいよ実戦の舞台に戻ってくる。
12日(日本時間13日)に開幕する米下部ツアーのプエルトリコ大会で復帰することが決まった。左股関節の関節唇損傷や右足首の故障のため長期欠場しており、21年10月のBNPパリバ・オープン以来、約1年8カ月ぶりの実戦に臨む現在の思いをWOWOWの独占インタビューで語った。
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期待と不安がある-。錦織は5月中旬に行われたWOWOWの独占インタビューで「まだあまり(復帰の)実感がないというか、もう少しのところまできています。試合ができるのかという不安と早く試合をしたいわくわく感と、両方大きくありますね。100、100くらいです」と正直な気持ちを口にした。
22年1月に左股関節唇の手術を受けて復帰を目指したが、その道程は険しいものだった。「昨年9月か10月くらいにそろそろ復帰できそうな時に(右)足首を捻挫してしまいました」。右足首は12年後半に痛みが出て、それ以降はプロテクターを装着してプレーを続けてきた古傷。今回は通常の捻挫とは異なり、神経に関わるような痛みが生じたため、回復までに時間を要したという。
今年2~3月に急に回復し、「いけると思ったのは4月くらいからです。痛みがなく、結構動けるようになってきました。それまではちょっと動くのも痛みがあって、ポイント練習すらできない感じでした」。現在はサーブから始める練習も行っているが、2セット、3セットを耐えるための耐久性が課題となる。
21年10月のBNPパリバ・オープン以来、実戦から離れること約1年8カ月。常人なら心が折れそうなものだが、錦織は現状を冷静に客観視していた。
錦織 (ダメかなと思った瞬間は)それは意外となかったです。まだやれるだろうし、冷静に見て5、6年後の40歳まで体が持つか分かりませんが、そのくらいまでプレーできる可能性はあります。あと5年もできるんだと考えたら、リハビリ生活も頑張れます。残り1、2年しかないとなったら、トップに戻ってくるまで1年くらいかかるだろうし、たぶん結構きついと思います。そう考えたら冷静に頑張れています。
14年の全米オープンでアジア男子シングルス初の4大大会準優勝を果たし、15年2月には当時の男女を通じて伊達公子と並ぶ日本最高位の世界ランキング4位に。16年リオデジャネイロ五輪では日本テニス界96年ぶりのメダルとなる銅メダルをもたらした。今も数々の偉業は色あせていない。
日本テニス界をけん引し続けてきた男の復帰戦。「もうすぐ復帰が近づいています。復帰の大会に向けてしっかり準備して、またベストの試合を皆さんに見てもらえるように頑張ります」。その勇姿を再び目にする瞬間が迫ってきている。
◆錦織の故障との戦い 17年8月の全米前哨戦の練習中に右手首尺側手根伸筋腱(けん)を脱臼。19年10月には右肘の骨棘(こっきょく)を取り除く手術を受けた。20年8月には新型コロナウイルスに感染して復帰予定の全米出場を断念、同9月にオーストリアで約1年ぶりに実戦復帰した。だが、21年9月に左股関節唇損傷の痛みが再発。同10月を最後に実戦から離れ、22年1月に患部を手術。復帰を目指す過程の同9月に右足首を捻挫。今年に入り2月中旬、5月末と下部ツアーにエントリしながら復帰を延期していた。
錦織の復帰戦はWOWOWが放送、WOWOWオンデマンドでライブ配信される。