元世界記録保持者の渡辺一平(26=トヨタ自動車)が地元九州でメダル獲得はならなかった。2分8秒78で6位だった。
大会前、大分・津久見市出身の渡辺は、特別な思いを口にしていた。22年ぶりの自国開催。その場で泳げる幸せをかみしめていた。
「(知人から)『28日の決勝のチケットだけ取ったから、決勝に残ってね』という連絡もいただきました。挫折も経験して『水泳、どうしよう』と思っていたところから、こうやって楽しく水泳ができている。今、僕自身の頑張っている姿を見てもらいたいです」
佐伯鶴城高卒業までを地元で過ごした。3人の姉をもつ4人きょうだいの末っ子として、体重約4100グラムで生まれた。幼い頃から水が好きで、風呂で1~2時間遊ぶことも多々。地元のつくみJSCで泳ぐ姉の姿を見ながら、小学校入学前から「僕も行きたい!」と両親にねだったという。
海に面した津久見でのびのびと育ち「泳ぐ楽しさ」が原点にあった。高校卒業後には早稲田大へ進み、16年リオデジャネイロ五輪(オリンピック)6位入賞。翌17年には世界記録保持者となった。だが、21年4月の東京五輪代表選考会では代表入りを逃し、涙した。
「競泳の面白さとも言えるし、僕自身が感じるのは、すごく残酷なスポーツというか。リオの時は逆の立場で代表になって、それからここまでは引っ張る立場としてすごく頑張ってきたつもり。結果は残念ですけど、代表権を獲得した2人には、東京五輪で頑張ってほしい」
一発勝負。自国の大舞台を本気で目指していたからこそ、反動は大きかった。
あれから2年。九州で開催された世界最高の大会で、決勝のレースを泳いだ。
その姿を、支えてくれた人々へ届けた。【松本航】


