試合に敗れ、涙する尾道フィフティーンに最後のゲキが飛んだ。 「おい、泣くなよ! 最後まで走れ!」

ピッチを出る選手1人1人と固い握手を交わしてから、すうっとグラウンドを去る。今季限りでの退任を表明していた梅本勝監督(55)にとって、尾道でのラストゲームとなった。

「私がラストということで『勝利をプレゼントしたい』という思いが伝わってきた。ただ、勝ちたい気持ちが強すぎて、外行きのラグビーになってしまった。選手たちの気持ちが空回りしてしまった。力みがあったので、そこは指導者の責任。リラックスさせてあげたかった」

対戦相手も前任校の石見智翠館(当時は江の川=島根)で、運命的な巡り合わせとなった。「気負い過ぎた。チャレンジャー精神がなかった。もう少し、どんどんいってほしかった」。最後まで尾道の勝利を追い求めた。

今後は倉敷(岡山)に移る。後任は田中春助コーチ(30)が監督に昇格する。

「きっちりと後継者に譲ることもしないといけない。平成が終わるタイミングで、と。50歳を過ぎたときに尾道での引き際を意識して考え出した」

新たなスタートは、本当にゼロから始まる。「次の場所にラグビー部はないです…。ただ、情熱を持って取り組んでくれた選手たちに感謝です。この時間を共有できたのは指導者冥利(みょうり)に尽きる。次の地で恩返しを倍返しにしないといけない」。思いは熱い。いつか花園にも、戻ってくるつもりだ。「また新たなスタートです。ひたむきにラグビーに打ち込む選手を育てて、社会のリーダーにもなっていけるような人間形成にも努めたい。焦らずじっくりやっていきます」。“熱血先生”は、最後の最後まで前に出る。【真柴健】