【トゥールーズ(フランス)=松本航】日本(世界ランク14位)のフランカー、リーチ・マイケル(34=BL東京)が貴重なトライで勝利に導いた。

チリ(同22位)との1次リーグ初戦にフル出場。9点リードの後半13分にトライを決め、42-12で下した。4トライ以上のボーナス勝ち点も獲得。自身はW杯日本代表最多の通算14試合出場となり、トンプソン・ルーク氏(42)に並んだ。代表81キャップも小野沢宏時氏(45)と2位タイとなった。快挙を勝利で祝い、イングランド(同8位)との第2戦(17日、ニース)に向かう。

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やはり、リーチだった。CTBライリーの一時退場、失点で苦しむ後半13分。連続攻撃の最後、頼れる男は防御の間をぶち抜いた。インゴールに飛び込み「狙い通り。“ここ”という時に顔を出して、取れて良かった」と笑った。前後半ともに先に失点。客席でウエーブが続く独特の雰囲気だった。主将のNO8姫野が欠場するなど、よぎる不安を全て消した。前半から突破、ライン際でのタックルと体を張った。W杯最多出場を「考えていなかった」と驚くほど、目の前に集中し、22人の仲間が続いた。

4年前の日本大会。主将として重責を担う一方、大会前から体は悲鳴をあげていた。プレーの質が上がらず、歴史的初勝利を収めたアイルランド戦も途中出場。タックル、ボール争奪戦、スクラム…。日常的に深い姿勢を繰り返し、股関節の骨が過剰に出て痛んだ。そのままトップリーグ(現リーグワン)に突入。翌20年3月、コロナ禍でリーグが打ち切りとなり、左右の股関節、両足首、両耳と計6度メスを入れた。福岡・北九州市の病院で約1カ月半入院し、術後は松葉づえからリハビリが始まった。

「自分のやりたいプレーができなくて、引退をしようと思っていた。ここまで来られたのは奇跡と思う」

椅子に腰かけ、子どもを抱いても痛みが出た。担当医師の協力でBL東京の滝田陽介トレーナーも手術室に入り、実際に患部の状態を確認した。帰京後も緻密に情報交換し痛みで避けた脚のトレーニングも再開。昨春、リーチに「いい感じで代表に合流できたのは初めて」と笑顔が戻った。滝田トレーナーも「最近、ラグビーを純粋に楽しんでいる」と回復を喜ぶ。

ニュージーランドから15歳で来日し、もう19年がたった。前回W杯後に長男が生まれ、長女は小学4年生。娘からは「パパ、足が速いから蹴って、捕って、そのままいけばいいじゃん」と助言されるようになった。普段から「ボロボロで活躍できないお父さんは見せたくない」と家族を励みにし、4度目のW杯に来た。

初出場だった12年前、日程を踏まえた戦略でベスト布陣とせず、母国のニュージーランドに7-83で大敗した。「これが日本の強さじゃない」。フル出場した22歳の悔しい思い出を、今も忘れない。8年前に南アフリカを破り、4年前に8強にたどり着いた。日本の進化を知る男は言い切る。

「弱い時の代表、優勝を狙える代表を経験してきた。特別な場所。W杯で『日本は強い』と証明したい」

最終戦のアルゼンチン戦前日、10月7日に35歳の誕生日を迎える。「(次も)負けられない。もう1度、気を引き締めてやっていきます」。日本の絆を信じ、仲間と最高の旅を進める。

【動画】やっぱり頼れるこの男 勝利をたぐり寄せたリーチ・マイケルのトライ>>