「平和主義」の横綱朝青龍(28=高砂)は、ご機嫌だった。1日は愛知・春日井の春日野部屋へ名古屋入り後初の出げいこ。同部屋の前頭栃ノ心は軍事訓練を受けるためにグルジアに帰国し、けいこ場にいなかった。「黒海とか栃ノ心とかいないね」と自ら切り出し「ビックリしたよ。『軍隊に行った』ていうから『えっ?』ってね」。目を丸くしたあとは「平和が一番いいな」とうなずいた。

 前頭栃煌山、栃乃洋、朝赤龍と連続17番の申し合いで16勝。土俵上ではダメ押しすることもなく穏やかで「平和」だった。「軽い感じがしましたね。でも悪くないですね。出足もいいし」と、妙に丁寧な言葉遣いで表現し、ホースの水で汗を洗い流すと報道陣に向けて笑顔で放水。「いい天気だ。体、焼こうかな」と話すなど、イライラしていた前日からは一転した。

 2日は、CMで演じる「ファン太郎」としてDJを務めるニッポン放送「オールナイトニッポン」(11日深夜放送)の収録が行われる。土俵外は充実しているが、万全にはほど遠い。腰回りは緩み、左ひじにはがっちりとテーピング。申し合いも5番終えた時点で息が上がるなど、スタミナ不足も明らかだった。名古屋場所(12日初日、愛知県体育館)まであと10日。「少しずつなじんでくれれば。(場所までに)1度、日馬富士とやりたいね」と話すが、3場所ぶりの優勝に向けて、取り巻く環境は決して「平和」ではない。【近間康隆】