<大相撲名古屋場所>◇4日目◇13日◇愛知県体育館

 東大関魁皇(38=友綱、本名・古賀博之、福岡県出身)が豊ノ島戦で今場所初白星を挙げ、千代の富士(元横綱、現九重親方)の持つ史上最多記録の通算1045勝に並んだ。

 魁皇の記録は、「ボランティアトレーナー」と「怪力マッサー」に支えられている。友綱親方(元関脇魁輝)の指導、充子夫人の献身なども欠かせないが、この2人なくして語れない。大阪在住の杉本昌一トレーナー(44)と、奈良で接骨院を営む柔道整復師・井上哲氏(37)のコンビが、魁皇の肉体を戦える状態に仕上げている。

 後援者を通じて知り合った杉本トレーナーは00年の初優勝前から10年以上、トレーニングに付き添ってきた。場所がない偶数月を中心に、魁皇は大阪のジムにやってくる。多い年は、のべ2カ月にも及ぶ。

 「力が落ちたと言われますが、マシンやウエートトレの重さは、ほとんど変わっていない。力は一般成人の3~4倍。昔はここ一番に弱いと言われたけど、今は火事場のくそ力を発揮するタイプ」。同トレーナーは、7年前にジムを退社し、今はコンピューター関連の自営業。無償のボランティアで、魁皇を助ける。「夢なんです。頼りにしてくれる人のために役立てるなんて、なかなかできないですから」。

 治療やマッサージを担当する井上氏は、ゴッドハンドで185センチ、164キロの体を治す。杉本氏の紹介で、魁皇が東京から訪れるようになって8年。今場所中、2度も名古屋から2時間半かけてやってくるほどの信頼関係がある。「お相撲さんは体の筋層が分厚いから、普通のマッサージでは、なでられているようにしか感じないはず。僕は、この業界でも力が強いほうなんです。最初から『こんなの受けたことない』と言っていました。同じ強さで、十両の力士にやったら、痛くてベッドから落ちました」。

 井上氏は「パーツの力は落ちているが、自分の形に入った時の力は尋常じゃない。スピードも保てている。同じ箇所を2回ケガしていない運の良さもある」と分析する。2人とも、ほかの有名スポーツ選手の面倒を見ているわけでなく、魁皇と「縁」があって、支えてきた。39歳間近でも戦える理由が、魁皇にはある。