10093人。12631人。10712人。5月3日(憲法記念日)同4日(みどりの日)同5日(こどもの日)阪神のファームが3連休で甲子園球場に集めたお客さんの数である。もちろん、過去80年の歴史を振り返ってみても、2軍戦でこれだけの観客を動員したのは初めてのこと。スタンドの盛り上がりはまるで1軍並み。この中から“カケフ、カケフ”の掛布コールが何度湧き起こったことか。さすが“ミスターT”だ。今回のこのコーナーは鳴尾浜から甲子園に移動。本来、3連戦の狙いは広島に絞って取材に行ってみたが、広島水本2軍監督の「今年は何とかピッチャーを育てたい」という方針とは程遠いゲーム展開とあって急きょ方向転換。阪神タイガースにおける掛布監督の存在感を目の当たりにして“掛布フィーバー”にスポットを当てることにした。
ゴールデンウイーク真っただ中とはいえ、2軍戦だ。1日ぐらいの間違いはあったとしても3日間とも1万人以上集客できるイベントではない。ところが…。合計で33436人。あらゆる角度から、どう詮索しても考えられるのは掛布人気しかない。すごい、のひと言。スタンドには31の背番号にKAKEFUのネーム入りユニホームを着ている人が結構いた。選手交代でグラウンドに出るものなら「カケフー」の声援があちこちから飛ぶ。「ありがたいですね。ファンの皆さんが素晴らしい舞台をつくってくれました」と同監督。若手育成の後押しをしてくれるファンに大感謝していた。真ん中の日には坂井信也オーナーも球場に姿を見せていたが、果たして、どう感じたことか。
「目標、1日1万人」。観客動員に一番気合がはいっていたのは同監督だった。この3連戦を機会があるごとにメディアを通じてPRしていたし、例の監督、コーチ、選手を紹介するカードの写真に手書きで1000枚サインしてファンに配布した。大変な作業を自分から進んで行い、熊本地震への義援金の協力も先頭に立って実行した。そして、某お菓子メーカーとタイアップ。タイガースのロゴマーク入りプリッツにOB、現役選手のフィギュアが付いたもの2万個を用意。入場者全員に手渡す予定をしていたが、いざフタを開けてみると初日で品不足になることが判明。ファンサービスを先着順に変更してなんとか乗り切ったほどの盛況ぶりだった。
3連戦の成績は1勝2分け。試合の結果は度外視、入場者の方が目立った3日間だったが、ファンはたくさん入った。試合内容は充実していた。まさしく一石二鳥。掛布監督はご満悦で「ファンの皆さんの声援がいい刺激になりましたし、励みになりました。いい緊張感の中で試合ができたことが、こういう、いい結果になったと思います。やっぱり選手を育てるのにはファンの人の目は必要ですし、感謝しています。それと、久しぶりに甲子園で勝負したんですが、甲子園球場でのお客さんとの空気感というんですかねえ。厳しくもあり、温かくもあっていいものですね」。甲子園球場と背番号31が年月を経てもバッチリはまっていた。
大イベントとなった3連休だったが、ファームで一番大事な選手育成に抜かりはない。ある意味同監督の思惑どおりに事は運んでいる。ファンの目と選手の成長をひとつのものとして考えているところは、名もない一高校生からたたき上げて成長したスターだからこその発想だろうし、球界の押しも押されもせぬスターの座をつかんでからもファンを大切にしてきた。苦しい修業の中で実際に肌で感じた感覚から会得した若手育成法は確固不抜。もうひとつの「陽川、原口が4番を体験して上へあがった。今度は上本ですね」という4番の重みを実感させる育成法もきっちり手を打っている。上本「4番というだけで何か重みを感じます。チャンスで打順がよくまわってくるとかでなく、4番というだけで気持ちが引き締まります。僕なんか小学生ぐらいの時しかありませんから」。この3連戦、4番で5打点を挙げた。復活間近か-。と思ったら8日に昇格していた。選手会長。ペナントレースはこれからだ。重責を果たしてほしい。そして掛布監督。今後も注目していきたい。
【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)



