元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。24回目は「クライマックスシリーズ(CS)について考える(下)~リーグ優勝チームのアドバンテージ1勝は大きいか小さいか~」です。

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 クライマックスシリーズ(CS)は今年で10回目となる。CSファイナルステージではリーグ覇者に1勝のアドバンテージがあるのはご存じの通りだが、果たしてこの1勝は大きいか小さいか。

 リーグ優勝したチームが日本シリーズ切符を逃した場合、または日本一にリーグ制覇した球団がなれない場合、この手の話が話題となる。

 「下克上」という言葉でメディアは盛り上げてくれるが、実際、下克上が起きるケースはそこまで多くない。

 昨年まで過去9回のCSで日本シリーズ進出を逃したリーグ優勝球団は3回しかない(07年巨人、10年ソフトバンク、14年巨人)。

 また、シーズン2位以下の球団がCS、日本シリーズを制し、日本一に輝いたのは、07年の中日(シーズン2位)と10年のロッテ(同3位)の2回しかない。

 さらに今回のアドバンテージ1勝は単なる1勝ではない。過密日程の妙も手伝って、それ以上の価値があると私は考えている。

 CS第1Sが8日から3連戦、同ファイナルSが12日から6連戦組まれている。最大試合行われたと仮定すると第1SとファイナルSの間隔はわずかに中1日しかない。

 これがどう影響するのか。パ・リーグでシミュレーションしてみよう(先発の登板間隔が中4日の場合)。

 CSファイナルSで、日本ハムならエース大谷を第1戦(12日)と第6戦(17日)の2度、先発させることができる。

 しかし、勝ち上がってきた勝者チームは、CS第1Sでエースを初戦(8日)に先発させるため、ファイナルSでは第2戦(13日)となる。ファイナルS最大6戦で1度しか先発できない計算になる。

 第1S勝者が2連勝で勝ち抜けた場合。ファイナルS第1戦は大谷vs先発3番手。第1S2勝1敗突破の場合、大谷vs先発4番手となる。球界を代表する大谷に相手は先発3番手か4番手をいかせるしかない状況となる。

 中4日でいくデメリットを考慮し、先発の登板間隔を中5日にした場合。ファイナル第2戦は日本ハム2番手vs勝者5番手となる。CSの過密日程が、下から上を狙うチームにとっては見えない壁となり、先発ローテーションでもビハインドを背負う。これが1勝以上の見えないアドバンテージとなる。CSはシーズン1位のチームに優位にできているシステムなのだ。

 「下克上のロッテ」と呼ばれた2010年はシーズン3位からCSを勝ち上がって日本一、CSの前身となる05年プレーオフではシーズン成績2位ながら1位ソフトバンクを破って31年ぶりリーグ優勝&日本一となった。

 私も2010年にロッテで劇的な日本一を体験した。05年と10年のロッテで共通していたのは第1Sで2連勝突破した点だった。下克上を目指すなら最低でも第1S2連勝でクリアしたいところだ。

 ペナントレースはリーグ優勝とタイトルを懸けた争い。CSは日本一の戦いだ。

 昨年セパの覇者、ソフトバンク、ヤクルトもCSは余裕の勝ち上がりだった。強さが本物であれば順当に勝ち上がっていく。リーグ優勝した広島、日本ハムにとっては、CS、日本Sの異なる2つの世界で完全制覇なるかが、実力の見せどころとなる。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)