9年ぶりのセンバツ出場を目指す慶応(神奈川2位)が、拓大紅陵(千葉1位)に5-4で競り勝った。0-0の5回に明大・善波達也監督(55)の長男の力(つとむ)捕手(1年)が、高校初本塁打となる先制ソロをマーク。守備でも好リードで攻守で勝利に貢献した。センバツ当確まであと1勝とした。

 無我夢中で一塁を回った慶応・善波の耳に、大歓声が届いた。0-0の5回1死、肩口から入ったスライダーに反応し、左翼ポールに直撃。試合の主導権を握る先制ソロは、記念すべき高校初本塁打だった。「まぐれです。変な気持ちというか、フワフワした感じ」と驚きながら、ダイヤモンドを回った。

 明大の善波監督を父に持ち、幼い頃から、東京6大学野球を観戦に訪れた。小学校の低学年までは明大の試合のみだったが、小学3年生の時に見た早慶戦が少年の心に衝撃を与えた。「すごい雰囲気だった。ここでやってみたいと思った」と「KEIO」に憧れを抱いた。憧れは目標へと変わって、入学を決めた。

 父と同じ捕手を守るが、教わったのは野球に対する心構えだった。「『準備をしっかりしろ』と言われます」。技術的な話は「ほとんどないです」と言ったが、大学日本代表でも監督を務め、今夏のユニバーシアードで金メダルを獲得した父の勝負勘を継承。先制ソロを含む2安打1打点、守備では好リードで1点差勝ちに導いた。

 あと1勝で、9年ぶりのセンバツへの当確ランプが点灯する。「甲子園に行くことも、(早慶戦でのプレーも)どちらも夢」と力を込めた。【久保賢吾】

 ◆善波力(よしなみ・つとむ)2001年(平13)4月14日生まれ、神奈川・綾瀬市出身。小3の時に吉岡サプリングスで野球を始め、三塁、投手を経て、捕手に転向した。中学時代は麻生ボーイズに所属。慶応では1年夏からベンチ入りし、今秋から正捕手。家族は両親と姉2人。168センチ、73キロ。右投げ右打ち。