<レリゴー!!甲子園>

 東海大菅生(東京)の「しんちゃん」が、投打二刀流で春の甲子園に乗り込む。第87回選抜高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の出場32校が、23日の選考委員会で決定する。日刊スポーツでは「レリゴー!!甲子園」と題して、注目選手やチームにスポットを当てる3回連載を行います。第1回は「投手編」。昨秋の東京大会で優勝し、センバツ出場を確実にした東海大菅生のエース勝俣翔貴投手(2年)は、最速142キロの投球とともに、打撃でもスカウト陣から注目を集める好選手だ。

 やや太めのキリリとした男らしい眉毛に、愛嬌(あいきょう)あふれる笑顔。頭はもちろん丸刈りだ。言われてみれば、どことなく…。勝俣は、「入った時から先輩に言われてました。クラスでも、よく言われます」と笑う。チームメートからは、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の主人公、「野原しんのすけ」に似ていると評判なのだ。

 「オラ、しんのすけだぞぉ~」の決めゼリフを持つ主人公は、埼玉・春日部市民だが、勝俣は神奈川・箱根町生まれ。箱根駅伝で名勝負を生む5区の坂道、宮ノ下のすぐ近所で生まれ育った。名所の坂道は「走ったことはありません」と笑うが、自然の中で培った強い下半身は投打の源。現在は4キロ増量して77キロにした体を、筋肉質に変えるトレーニングを続けている。

 投げては最速142キロを誇り、縦に落ちるスライダーが最大の持ち味だ。昨秋の東京大会を18年ぶりに制し、明治神宮大会初戦(対静岡)では11奪三振完投に、神宮の右中間にライナーでぶち込む同点ソロを放った。プロ注目右腕だが、本格的に投手になったのは昨夏の大会後から。公式戦登板は昨秋が初めてだった。

 「ピッチングより、バッティングの方が好きです。打っても3割で半分以上は失敗する。難しい分、やっていて楽しい」と言う。打順は主に3番で、登板しない時は右翼で出場。現状、スカウト陣からは野手として評価する声が根強い。それでも、元中日投手の若林弘泰監督(48)は「一番はメンタルの強さ。毎回ピンチをつくっても、抑えることができる」と信頼する。

 今春センバツはドラフト1位候補の県岐阜商・高橋純平投手(2年)が、大会NO・1投手に挙がる。勝俣は「投げ合ってみたいし、バッターとして対戦したい」と心待ちにする。年明けから、すでに巨人、ソフトバンクのスカウトが視察。投打二刀流に挑む「菅生のしんちゃん」が、春の甲子園を熱くしそうだ。【前田祐輔】

 ◆勝俣翔貴(かつまた・しょうき)1997年(平9)7月20日、神奈川・箱根町生まれ。箱根の森小1年から、「箱根フリッパーズ」で投手兼遊撃手として野球を始める。箱根中では「小田原足柄シニア」に所属。東海大菅生では1年夏から一塁手として出場し、高校通算15本塁打。変化球はスライダー、カーブ、フォーク。家族は両親、妹、弟。177センチ、77キロ。右投げ左打ち。