<春季高校野球東北大会:花巻東8-1利府>◇7日◇1回戦◇青森市営野球場

 怪物が復活!

 今秋ドラフトの超目玉、花巻東(岩手)・大谷翔平投手(3年)が、公式戦では約1年ぶりとなる完投勝利を挙げた。自己最速タイの151キロをマークし、利府(宮城)相手に8回(コールド)128球を投げて9安打1失点11三振。今春センバツで見られた、フォームの崩れが原因の制球難も解消され、四死球もわずか2つと最後まで安定感があった。

 1カ月後に迫った夏の開幕に向け、大谷のエンジンがかかり始めた。公式戦登板は今春2度目。岩手県大会の専大北上戦では、12三振を奪いながら、力みからフォームを乱して7四死球と荒れたが、この日は最後までしなやかに投げ続けた。「球速を出しているつもりはない」と言いながら、低めでも伸びる直球は、自己最速タイの151キロをマーク。日米12球団のスカウトが熱視線を送る中、センバツ時の150キロを上回る公式戦最速をたたき出した。

 連戦が続く最後の夏を戦い抜くため、内容にこだわった。佐々木洋監督(36)から「球数を減らすよう」指示を受け、中盤からは変化球主体にシフトした。腕が下がって横振りになる悪癖を懸念し、横に滑る得意のスライダーは依然として封印。「肘が下がらない、小さいスライダー」で利府打線を手玉に取り、11三振を奪った。「試合の中で、投げてつくものなので」と、握力を要するフォークも多投。真夏の連投を想定した、意義ある128球だった。

 自身のレベルを上げていく中、対峙(たいじ)してみたい打者もいる。プロ注目の光星学院・田村龍弘主将(3年)だ。昨秋の東北大会準決勝は故障で登板がなく、公式戦での「投手大谷VS打者田村」は実現しなかった。メールをし合う間柄で、田村も「万全の大谷とやりたい」と昨秋から熱望していた。東北大会ならではの“夢の対戦”に、大谷は「カーブを3球続けて…」とイメージを膨らませる。舞台は決勝。好打者たちとの戦いが、怪物をさらに成長させる。【今井恵太】