「1回戦ボーイ」の逆襲が始まる!! DeNA今永昇太投手(22)が広島戦で7回を被安打6、無失点で投げきり、6戦目で待望のプロ初勝利を挙げた。ここまでの5戦は防御率2点台で孤軍奮闘してきたが、味方の援護点に恵まれず4敗に沈んだ。2回には自らスクイズを決めて3点目をゲット。高校時代も初戦コールド負けからはい上がった新人左腕が、念願の1勝をつかみ取った。

 口元がわずかに緩んだ。待望の1勝。今永は同期入団の熊原が9回を締めくくってもポーカーフェースを貫いた。ウイニングボールを左手に持ち、ラミレス監督と無数のストロボを浴びた。プロ6戦目で手にした初勝利に「単純に遅すぎた。これだけ勝つことが大変だと…。今日は広島ではなく過去の自分に勝てた」と正直な胸の内を明かした。

 初登板から1カ月以上が経過した。3月29日の本拠地開幕戦でプロ野球史上初の「巨人1回戦」で先発デビュー。だが7回を4失点(自責3)で敗戦投手に甘んじた。勝てない日々の中、貪欲に勝負にこだわった。横浜スタジアムでの試合前練習では早出でバントケージに向かった。「投手に打席で粘られたら相手投手は嫌なはず」と、バントではなくカットの練習を繰り返した。

 勝負への執念を教えてくれたのは「1回戦」だった。小学1年から始めたソフトボールは「入団時期が遅かったので最初の試合はレフト」と勝敗に興味はなかった。中学からは軟式野球に移り、マウンドが主戦場に。北筑(福岡)のエースとして臨んだ高2の夏は、地区1回戦で2-9の7回コールド負けを喫した。「上級生に申し訳ないのもあったし、初めて『勝ちたい』と思った。本気で勝つために野球をするようになった」。県立高校の無名左腕が最後の夏は4回戦まで勝ち上がった。

 勝つか、負けるか。全ては自分自身の中にある。「ネガティブになってもダメ。自己発信していかなければ勝利はつかみ取れない」。5戦4敗の試練から学んだ。この日の投球内容は決して調子が良かったとは言えない。登板最終回となった7回は「ラミレス監督が何を求めているかを考えながら投げた。技術ではなく気持ちだった」。1死一、三塁のピンチを招くも無失点に封じ込めた。

 「これから積み重ねていくための小さな、小さな、1勝だと思う」。チームに今季初の3連勝をもたらした新人左腕が、堂々と生き様を示した。【為田聡史】

 ◆今永昇太(いまなが・しょうた)1993年(平5)9月1日、北九州市生まれ。駒大では3年秋7勝2敗でMVP、神宮大会優勝。東都リーグ通算18勝16敗。15年ドラフト1位でDeNA入団。177センチ、80キロ。左投げ左打ち。背番号21。年俸1500万円。

 ▼今永がプロ初勝利。試合前まで防御率リーグ5位だったが、規定投球回到達者で唯一勝ち星がなかった。援護点が少ないのが理由で、試合前まで9回平均で0・50点。この日の試合で初めて1試合2点以上の援護をもらい、援護率は1・64点となったが、依然リーグで最少だ。